男性にも更年期がある:LOH症候群の症状・検査・治療を内科医が解説

医療

「最近、なんとなく元気が出ない」

「イライラしやすくなった、集中力が続かない」

「朝の勃起がなくなった、性欲が湧かない」

こうした変化を「ただの疲れ」「歳のせい」と片づけていませんか。

更年期というと女性の症状というイメージが強いですが、男性にも更年期があります。

医学的には「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」と呼ばれ、40代以降の男性であれば誰にでも起こりうる状態です。

実は治療できる不調であるにもかかわらず、多くの男性が「気力の問題」「性格の変化」として見過ごしています。

今回一般内科医の立場から、症状・検査・治療まで正確に解説します。


結論を先にお伝えすると

  1. LOH症候群はテストステロン(男性ホルモン)の低下によって起こる
  2. 最も特徴的なサインは性機能に関する3つの症状(後述)
  3. 診断には症状と血液検査の両方が必要で、自己判断はできない
  4. 肥満が原因の場合、まず減量から。それでも改善しなければホルモン補充療法が選択肢になる

LOH症候群とは:女性の更年期との違い

LOH症候群(Late Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)は、加齢に伴って男性ホルモンであるテストステロンが徐々に低下することで、心身にさまざまな不調が現れる状態です。

女性の更年期障害との大きな違いは、「終わりが決まっていない」という点です。

女性の更年期障害男性のLOH症候群
原因ホルモンエストロゲンテストステロン
時期閉経前後の約10年間40代以降、いつでも発症しうる
ホルモンの変化比較的急激に減少20代をピークに緩やかに減少し続ける
終わり閉経後の体の変化に応じて落ち着く明確な終わりがなく、放置すれば長期化しやすい

テストステロンは20代をピークに緩やかに低下し続けるため、「気づいたときには何年も不調を放置していた」というケースが少なくありません。

どのくらいの人に起こる?

症状と低テストステロン値の両方を満たす場合のLOH症候群の頻度2〜6%程度と報告されています。

思ったよりも当てはまる人は少ないと感じます。

しかし、症状の有無を問わず低テストステロン値のみで見ると17%程度に上るとされ、自覚症状のない「隠れLOH」もかなりの割合で存在すると考えられます。

中高年の就労男性の約10%がLOH症候群の症状に悩まされているという報告もあり、決して珍しい状態ではありません。


最も注目すべき症状:性機能の3つのサイン

LOH症候群にはさまざまな症状がありますが、テストステロン低下との関連が医学的に最も明確なのは性機能に関する症状です。

  • 性欲の低下
  • 朝の勃起(早朝勃起)の減少
  • 勃起障害(ED)

大規模な研究データでは、これら3つの性機能症状だけが、テストステロン値との間に明確な相関関係を示すことがわかっています。つまり「疲れが取れない」「イライラする」といった症状よりも、この3つの方がLOH症候群を疑う上で信頼性の高いサインだということです。

その他の症状(非特異的)

以下の症状もLOH症候群でよく見られますが、テストステロン値との関連は性機能症状ほど強くなく、他の病気でも起こりうる症状です。

  • 疲労感・倦怠感
  • イライラしやすい(易刺激性)
  • 気分の落ち込み・抑うつ気分
  • 集中力の低下
  • 筋力低下・体力の衰え
  • 睡眠障害

注意点:これらの非特異的症状はうつ病でも同様に見られます。LOH症候群を疑って受診しても、実際にはうつ病であることも多く、自己判断ではなく医師による鑑別が重要です。


診断:症状だけでは診断できない

LOH症候群の診断には「症状」と「血液検査(テストステロン値)」の両方が必要です。どちらか一方だけでは診断できません

テストステロン測定の条件

テストステロン値は測定条件によって変動しやすいため、正確な診断のために以下の条件が推奨されています。

  • 採血の時間帯:早朝空腹時(午前7〜10時頃)。テストステロンは午前中に最も高く分泌されるため
  • 体調:十分な睡眠をとった後、急性の病気にかかっていない状態
  • 測定回数:1回の数値だけで判断せず、2回の測定で確認することが推奨されている

病院に行くときは、しっかり休めた日の朝一(朝ごはんを食べずに来る必要があるので)が良いでしょう。

診断の目安となる数値

総テストステロン値が8 nmol/L未満(およそ230〜300 ng/dL未満)の場合、LOH症候群が疑われます。

ただし肥満や糖尿病がある場合は、総テストステロンだけでなく遊離テストステロン(実際に働く形のホルモン量)も合わせて測定する必要があります。

追加で行う検査

  • LH・FSH(性腺刺激ホルモン):脳の指令によるもの(二次性)か、精巣自体の問題(一次性)かを鑑別
  • ヘマトクリット値:治療前の基準値として、また治療後の副作用モニタリングのために測定
  • 必要に応じてプロラクチン・MRI検査:脳下垂体の異常が疑われる場合

治療:まず「原因疾患の治療」が第一選択

「テストステロンが低い=すぐ補充療法」ではありません。まず取り組むべきは、テストステロンを下げている原因そのものへの対処です。

第一選択:可逆的な原因への対処

  • 肥満がある場合は減量:体重を5%以上減らすだけで、テストステロン値が有意に上昇することが報告されています。内臓脂肪はテストステロンを分解する酵素の働きを活発にするため、減量そのものが治療になります
  • 原因薬剤の見直し:一部の薬剤がテストステロン低下に関与している場合、可能であれば変更を検討
  • 睡眠・生活習慣の改善:睡眠不足そのものがテストステロン低下の要因になる

薬剤性の要因として有名なのは前立腺がん・前立腺肥大に対しての薬や多毛症(AGA)の治療薬があります。

テストステロン補充療法(TRT)

上記の対策で改善しない場合、症状があり、かつ確実に低テストステロン値が確認された男性に対してテストステロン補充療法が選択肢になります。

治療の目標値は、正常範囲の中央値(およそ450〜600 ng/dL)に設定されることが一般的です。

投与方法

剤形特徴
経皮製剤(ジェル)皮膚に塗布するタイプ。日々の調整がしやすい
注射製剤数週間おきの通院で投与
経口製剤飲み薬タイプ

期待される効果

  • 性欲・性機能の改善
  • 貧血の改善
  • 骨密度の増加
  • 体組成の改善(筋肉量の増加・体脂肪の減少)
  • 軽度の抑うつ症状の改善

治療を受けられない場合(禁忌)

以下に該当する場合、テストステロン補充療法は行えません。

  • 血栓症の既往(抗凝固療法との併用を検討する場合あり)

治療開始後のモニタリング

治療を始めたら終わりではありません。開始後3か月・6か月・12か月、その後は年1回以上のペースで以下を確認します。

  • テストステロン値(目標範囲に入っているか)
  • ヘマトクリット値(多血症の副作用がないか)
  • PSA値(前立腺の状態確認)
  • 症状の改善度・副作用の有無

テストステロンは「守りのホルモン」でもある

テストステロンは性機能だけに関わるホルモンではありません。低い状態が続くと、以下のようなリスクとの関連が報告されています。

  • 糖尿病・メタボリックシンドローム
  • 骨粗しょう症
  • 心血管疾患(動脈硬化・血管内皮機能の低下)
  • 認知機能の低下・認知症
  • サルコペニア(筋肉減少症)

逆に、テストステロン値が高い人の方が長寿だったという報告もあり、男性ホルモンは多くの病気のリスクから身を守る「健康長寿のための相棒」とも言える存在です。


何科を受診すればいい?

LOH症候群は主に泌尿器科で診療されますが、近年は「メンズヘルス外来」を設ける医療機関も増えています。

受診の流れとしては、まずかかりつけの内科に相談し、症状を伝えた上で泌尿器科やメンズヘルス外来を紹介してもらう形が現実的です。

糖尿病・高血圧などの生活習慣病を併せ持つ方は、内科でのフォローと並行して相談すると全体像を把握しやすくなります。

受診の目安

以下のうち、特に性欲低下・朝の勃起の減少・勃起障害のいずれかがあり、それに加えて倦怠感や気分の落ち込みも伴う場合は、一度受診を検討してください。

  • 性欲が明らかに減った
  • 朝の勃起がほとんどなくなった
  • 勃起が維持しにくい
  • 理由のわからない疲労感が続いている
  • 些細なことでイライラする自分に気づく

まとめ

  1. 男性にも更年期(LOH症候群)があり、40代以降いつでも発症しうる。女性と違い明確な終わりがない
  2. 最も信頼できるサインは性欲低下・朝の勃起の減少・勃起障害の3つ
  3. 診断には症状と早朝空腹時の血液検査の両方が必要。1回の数値だけでは判断しない
  4. 治療はまず減量など可逆的な原因への対処が第一選択。それでも改善しなければホルモン補充療法へ
  5. テストステロンは糖尿病・骨粗しょう症・認知症など多くの病気とも関連する「守りのホルモン」

「気力がない」「性格が変わった」で片づけず、思い当たる症状があれば、まずかかりつけの内科に相談してみてください。テストステロンの低下は、正しく診断すれば治療できる不調です。

自宅で簡易検査やまずサプリメントを期間限定で試すという方法もあります。以下のようなものを使用してみてもいいかもしれません。


参考資料

  • Wu FCW, et al. Identification of Late-Onset Hypogonadism in Middle-Aged and Elderly Men. N Engl J Med. 2010.
  • 成人男性の性腺機能低下症. JAMA. 2026年5月28日.
  • 日本内分泌学会「男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)」
  • 日本メンズヘルス医学会「LOH症候群・男性更年期とは」

関連記事:生活習慣病についての解説記事です。

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