「悪玉コレステロールが高いですね」
健診でいわれる言葉のベスト3に入るぐらい有名な言葉です。
コレステロールには代表的なものが2つあり、そのうちの一つのLDLコレステロールが悪玉コレステロールと言われています。
もう一つはHDLコレステロールと呼ばれ、こちらは善玉コレステロールと言われています。
脂質異常症(以前は高脂血症と呼ばれていました)は、この2つのコレステロールと中性脂肪(TG=トリグリセライド)の3つのバランスが悪くなっている状態を指します。
この記事では、健診でコレステロールが高いときに、どんなことを医者が考えているかを解説していきます。
皆さんが次に何をすべきかを考える一助になれば幸いです。

結論
脂質異常症の治療ゴールは、数値の改善ではなく「将来の心筋梗塞・脳卒中を防ぐこと」です。
健診結果のパターン(LDL高値、TG高値、あるいは両方)によって、優先すべき検査と治療のアプローチが明確に異なります。
よくある3つのパターン
- LDL高値: 動脈硬化の直接原因。リスク評価に基づき、薬物療法を検討する。
- TG高値: 生活習慣(食事・飲酒)の影響が強い。まずは生活改善が優先。
- 両方高い: 最も動脈硬化が進みやすい「ハイリスク状態」。総合的なリスク管理が必須。
健診結果で一喜一憂しないために
はじめに「コレステロールが高い」と言われても、どの数値が高いかによっても対策は大きく変わります。
パターン別:検査と治療の進め方
① LDLコレステロール(悪玉)が高い場合
- リスク評価: 「吹田スコア」などを用い、年齢・血圧・喫煙習慣から将来の心血管発症リスクを算出します。
- 検査: 頸動脈エコーで実際の血管の詰まり具合(プラーク)を確認します。動脈硬化の一つの目安になります。
- 治療: 生活改善で下がらない場合、スタチン(肝臓での合成を抑える薬)が第一選択となります。
② 中性脂肪(TG)が高い場合
- リスク評価: 150mg/dL以上が対象ですが、500mg/dLを超える場合は「急性膵炎」の原因になる可能性があるので、より食生活やアルコールとの付き合い方などの注意が必要になります。
- 検査: 脂肪肝の有無を確認するため、腹部エコー検査を行います。
- 治療: 節酒、糖質制限、有酸素運動が効果的です。薬物はフィブラート系が検討されます。
③ LDLとTGの両方が高い場合
- リスク評価: 最も注意が必要な「複合型脂質異常症」です。
- 検査: 糖尿病や甲状腺機能低下症など、他の病気が隠れていないか血液検査で深掘りします。
- 治療: まずはLDLの低下を優先しつつ、食事療法を並行して行います。
【比較表】パターン別アプローチまとめ
| 項目 | LDL高値型 | TG高値型 | 混合型(両方) |
| 主な原因 | 遺伝、飽和脂肪酸の摂りすぎ | 飲酒、甘いもの、肥満 | 遺伝+生活習慣、代謝疾患 |
| 血管への影響 | 非常に強い(プラーク形成) | 血管壁の炎症を促進 | 最大級のリスク |
| 優先される対策 | 脂質制限・薬物(スタチン) | 節酒・糖質制限・運動 | 総合的な生活改善・多剤併用 |
| 注視すべき合併症 | 心筋梗塞、脳梗塞 | 急性膵炎、脂肪肝 | 全ての動脈硬化性疾患 |
放置が一番のリスク
脂質異常症自体は「痛くも痒くもない」のが特徴です。しかし、血管の中では着実にダメージが蓄積していきます。
放置すればその分血管の老化が進行する可能性があり、必要に応じて治療を検討するようにしましょう。
今後の行動提案例
- 二次検査の予約: 健診結果を持参し、まずは内科を受診してください。
- 家庭での食事見直し: LDLが高い方は「卵・脂身」、TGが高い方は「お酒・お菓子」を今日から半分にしましょう。
- 記録の開始: 体重と血圧を毎日記録し、次回の受診時に医師へ提示してください。

実際に治療をするまでに確認すること
それでは実際に治療が必要なのかどうか、どう判断していくのかを解説していきます。
心血管発症リスクの確認
心血管の発症リスクは、脂質異常のほかに高血圧、糖尿病、性別と年齢(男性は45歳以上、女性は55歳以上)、脳卒中や心筋梗塞の家族歴(40-50歳代と比較的若く発症)、喫煙の有無で判断します。
健診で初めて指摘される年代は、30-40歳代から徐々に頻度が高くなると思います。
この時、ほかの生活習慣病・家族歴・喫煙などがなければ、年齢と性別によってまだ重大な心血管イベントの発症はほぼないと判断される場合もあります。
その場合は、投薬せず生活習慣の改善を中心にして経過観察となります。
特に閉経前の女性は冠動脈疾患リスクが男性より低く、薬(スタチン系)による一次予防効果も閉経前では明確ではないので、生活習慣改善が治療の中心になります。
内服してコントロールするメリット
現在わかっている報告では、55歳以上の女性に関して重大心血管イベント発症の有意なリスク低下が認められています。
ほかの報告では、女性の不安定狭心症入院・血行再建イベントのリスクは低下しましたが、心筋梗塞イベントの予防効果は明らかではありませんでした。
心血管疾患の一次予防では、LDL-Cの1 mmol/L(38.7 mg/dL)の低下は、男性では心血管疾患リスク比を有意に低下させましたが、女性では低下傾向を示すにとどまりました。
このように、スタチンによる心血管疾患の一次予防効果は日本人女性は特に明確ではありません。
年齢が男性45歳・女性55歳を超えてくると、投薬による予防効果がよりはっきり出てくるため、ここまで来たら投薬を勧めることが多くなりがちです。
改善できる生活習慣がないときは、年齢及び体質が原因の脂質異常症になるので、治療するには投薬せざるを得ないことも多く経験します。
その場合投薬をやめれば、以前の数値まで戻ってしまうので、将来的なことを考えれば継続して飲み続けるかどうかになります。
内服しないメリットは? 費用と時間
実際の費用と使う時間の兼ね合いについてです。
費用に関しては、実際によく使われる投薬量で考えると、おおよそ1-2万円/年程度の予想です。
この金額にさらに通院の手間・時間を合わせて、投薬効果によるメリットをどう判断するかになります。

一番の多い疑問:食事の考え方、外食との付き合い方は?
食事の考え方
2023年改訂版冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン上で以下のようにされています
- 脂身の少ない肉を摂取し、加工肉は控える
- 高血圧、脂質異常患者では低脂肪・無脂肪製品を奨める。バター、ラード、ココナッツ油は飽和脂肪酸が多いため、これらの食材を多く含む食品の摂取過剰にならないように注意
- 魚の干物やみそ漬け、寿司に加工したものでは塩分過剰になりやすいため、薄味で食べられる焼き魚、酒蒸し、マリネなどにすることを推奨。
- 食塩は、6 g/日未満を目標とする
脂質に関しては、飽和脂肪酸を総エネルギーの7%未満、コレステロール摂取を200 mg/日未満に制限し、減塩した日本食パターンを基本とすることが推奨されます。
具体的には、飽和脂肪酸とコレステロールを抑えるために、どの主菜を選択するかとなります。
- 肉より魚・大豆: 週の半分以上を焼き魚(青魚)や納豆、豆腐料理へ。肉を食べる際は、脂身の多いバラ肉やロースを避け、ヒレ肉や鶏ささみ(皮なし)を選択。
- 卵のコントロール: 卵黄1個には約200mgのコレステロールが含まれるため、卵料理は「1日1個まで」あるいは「2日に1個」を目安。
- 調理油の変更: バター、ラード、生クリームを避け、オリーブオイルやキャノーラ油を使用。
外食との付き合い方:頻度とメニュー選び
外食は塩分と飽和脂肪酸が高くなりがちなため、「調整日」として捉えるのが現実的です。
絶対に控えないといけないというわけではありません。月1回のランチ会があるなどは、十分継続可能です。
頻度: 週2回程度までにとどめます。それ以上の場合は、昼を外食にしたら夜は極めて軽い和食にするなどの「1日単位の引き算」が必要です。
具体的なメニューの選び方:
推奨: 刺身定食、焼き魚定食、そば(天ぷら抜き)、レバニラ以外の野菜炒め。
回避: ラーメン(スープ完飲は厳禁)、カツ丼、ハンバーグ、洋食のソース(バター多用)
外食後のサポートに、サプリメントを使ってみるのもいいかもしれませんね。
コレステロールでよくある疑問
Q. 健診の基準値はいくつ?
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、脂質異常症の診断基準を次のように定めています。
| 項目 | 基準 | 判定 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| LDLコレステロール | 120〜139mg/dL | 境界域(ほかのリスクも含めて判断) |
| HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
| 中性脂肪(トリグリセライド) | 空腹時150mg/dL以上、随時175mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
| non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |
これは病気かどうかを判断する基準で、薬を始める基準ではありません。治療の目標値は、年齢や血圧、糖尿病、喫煙などのリスクによって一人ひとり変わります。
Q. 食後の採血でも正しい値が出る?
中性脂肪は食事の影響を強く受け、食後は高めに出ます。そのため、2022年版のガイドラインでは、空腹時(150mg/dL以上)とは別に、随時(食後を含む)の基準(175mg/dL以上)が設けられました。
健診の前日は、ふだんどおりの食事にしておくと、実態に近い値がわかります。前日だけ食事を極端に控えても、意味はあまりありません。
Q. LDLコレステロールが180以上と言われた
生まれつきLDLコレステロールが高くなる家族性高コレステロール血症(FH)の可能性を考えます。日本動脈硬化学会は、次の3項目のうち2つ以上があればFHと診断するとしています。
- 治療していないときのLDLコレステロールが180mg/dL以上
- 手の甲・肘・膝などの黄色腫、またはアキレス腱が厚い
- 親・きょうだい・子どもなどにFHの人がいる、または若くして心筋梗塞などを起こした人がいる(男性55歳以下、女性65歳以下)
項目を満たさなくても、LDLコレステロールが250mg/dL以上ならFHを強く疑います。
FHは、若いうちから動脈硬化が進みやすい病気です。生活習慣だけで下げるのは難しく、早めの治療が勧められています。家族も検査を受けることが大切です。該当しそうな方は、健診結果を持って内科で相談してください。
Q. 中性脂肪だけが高い場合も治療が必要?
まずは、お酒、甘いもの、食べすぎの見直しが中心です。この記事で触れたとおり、500mg/dLを超えるような高い値では急性膵炎の心配が出てきます。脂肪肝を伴っていることも多いため、腹部エコーで肝臓を確認しておくと安心です。
Q. 一度薬を始めたら、やめられない?
体質や年齢が原因の場合、薬をやめると数値は元に戻ることが多いのは事実です。ただし、生活習慣の改善で数値が十分に下がれば、減量や中止を相談できることもあります。詳しくは関連記事「生活習慣病で薬を始めるとやめられない 本当?」をご覧ください。
参考資料
まとめ
コレステロールが高いと言われたときに、どんなことを考えて投薬や指導を決めているのかを解説しました。
LDLコレステロールなのか中性脂肪(TG)のどちらが高いかによって制限すべきものが違います。
また他の病気が併発している可能性(特に甲状腺機能低下症)もあり、追加検査が必要なこともあります。
一方ですぐに薬を使うべきなのか、使った場合のメリットとデメリットもあわせて解説しました。
大事なのは、ほかに血管系のリスクがあるかどうかであり、リスクがない場合は年齢と性別で判断します。
今の状況と将来的な見通し、自分の価値観・考え方もふまえて、どのタイミングで治療するべきなのか主治医ともよく相談して決めていきましょう。
情報源(エビデンス)
- 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版(日本動脈硬化学会)
- e-ヘルスネット(厚生労働省)
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