市販薬と医師処方薬の違い【解熱鎮痛薬編】ロキソニン・カロナール・イブを内科医が徹底比較

医療

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※2026年10月時点の添付文書をもとに作成しています。

「ロキソニンは市販のより病院のほうが強い」「カロナールは弱い薬」。外来でもよく聞く言葉です。

実際に添付文書を並べてみると、実は印象とは違う点がいくつも見つかります。

今回は「市販薬と医師処方薬の違い」シリーズの第3回として、解熱鎮痛薬を取り上げます。対象はロキソニン(ロキソプロフェン)、カロナール(アセトアミノフェン)、イブ(イブプロフェン)の3つです。

この3種類を実際の内科医から見た視点で解説していきます。

結論

  • ロキソニンは、市販薬も処方薬も1錠の成分量が同じ(ロキソプロフェン60mg)。
  • 差が大きいのはアセトアミノフェン。市販は1回300mg、処方は発熱に対して1回500㎎、痛みに対しては1回1,000mgまで使用可能。
  • かぜの熱に使う場合、処方薬でも量は控えめ。市販薬との差は思ったほどの差はない。
  • ロキソニンとイブは同じNSAIDsの仲間です。胃・腎臓・ぜんそくに注意が必要。カロナールはそれらには安全に使いやすい薬ですが肝機能障害は注意・
  • 15歳未満は、市販のロキソニンSもイブA錠も服用できない

3つの薬は2つのグループに分かれる

解熱鎮痛薬は、作用のしかたで大きく2つに分かれます。

ロキソニンイブカロナール
成分ロキソプロフェンイブプロフェンアセトアミノフェン
分類NSAIDsNSAIDsNSAIDsではない
炎症を抑える作用ありありほとんどない
主な注意胃・腎臓・ぜんそく胃・腎臓・ぜんそく肝臓(飲みすぎ・飲酒)
市販薬のリスク区分第1類(ロキソニンS)指定第2類(イブA錠)第2類(カロナールA、タイレノールA)

NSAIDs(エヌセイズ)は「非ステロイド性抗炎症薬」の略です。痛みや熱のもとになるプロスタグランジンという物質を減らします。

プロスタグランジンは胃の粘膜や腎臓の血流も守っています。そのため、効き目と副作用が同じ仕組みから生まれます。

リスク区分にも違いがあります。ロキソニンSは第1類で、薬剤師のいる店でしか買えません。理由は後述します。

成分量を並べてみる

添付文書に書かれた量を、成分ごとに整理しました。

成分市販薬(1回量/1日の上限)処方薬:痛みに使う場合処方薬:かぜの熱・痛みに使う場合
ロキソプロフェンロキソニンS:60mg/2回まで(症状が再び出れば3回目も可)1回60mgを1日3回。頓用は1回60〜120mg1回60mgを頓用。原則1日2回、最大180mg
イブプロフェンイブA錠:150mg(2錠)/3回まで1日600mgを3回に分ける1回200mgを頓用。原則1日2回、最大600mg
アセトアミノフェンカロナールA・タイレノールA:300mg(1錠)/3回まで1回300〜1,000mg。1日4,000mgまで1回300〜500mgを頓用。原則1日2回、最大1,500mg

頓用(とんよう)とは、症状があるときだけ飲む使い方のことです。

ロキソニン:1錠の中身は同じ

ロキソニンSと処方のロキソニン錠60mgは、どちらも1錠にロキソプロフェン60mgを含みます。

市販薬も処方薬の成分と同じなので、使用による副作用も同様のリスクがあります。

そのため、最低限薬剤師からの説明を受けたうえで購入するように決められています。

「病院のロキソニンのほうが強い」は、1錠あたりでは当てはまりません。違うのは使い方の幅です。処方薬は腰痛や関節の痛みに1日3回の定期服用が可能です。

市販のロキソニンSです。第1類医薬品のため、購入時に薬剤師から説明を受けることになります。

イブ:市販薬には別の成分が加わっている

イブA錠は、1回分にイブプロフェン150mgを含みます。処方薬の1回200mgより少なめです。

もう一つの違いは配合成分です。イブA錠には、鎮静成分のアリルイソプロピルアセチル尿素と無水カフェインが入っています。添付文書には「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」とあります。

鎮静成分=眠くなる作用と考えてください。

処方薬のイブプロフェンは単独の成分です。なお、イブプロフェンの市販薬は製品によって配合が異なります。箱の成分表を確認してください。

市販のイブA錠です。鎮静成分を含むため、服用後は車の運転をしないでください。

カロナール:差がもっとも大きい

市販のカロナールAとタイレノールAは、1錠300mgを1日3回まで。1日の合計は900mgです。

処方薬は、痛みに対して1回1,000mg、1日4,000mgまで使えます。1日量で比べると4倍以上の開きがあります。

「カロナールは効かない」と感じる方の一部は、量が足りていない可能性があります。ただし、市販薬を自己判断で増やしてはいけません。理由は次の章で説明します。

市販のカロナールAです。使う間は、かぜ薬などアセトアミノフェンを含む他の薬と一緒に飲まないでください。

かぜの熱では、処方薬も控えめ

表の右端の列を見てください。かぜ(急性上気道炎)の解熱に使う場合、処方薬でも「頓用・原則1日2回まで」と決められています。

ロキソプロフェンは市販と同じ60mg。アセトアミノフェンは300〜500mgで、市販の300mgと大きくは変わりません。

かぜの熱に限れば、市販薬でも処方薬に近い量を使えるといえます。

副作用と「使ってはいけない人」

ロキソニン・イブ(NSAIDs)

処方薬の添付文書では、次の方が禁忌(使ってはいけない)とされています。

  • 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)のある方
  • 重い腎機能障害、肝機能障害、心機能不全のある方
  • アスピリン喘息(解熱鎮痛薬でぜんそく発作が出る体質)の方
  • 妊娠後期の方

市販のロキソニンSとイブA錠も、「出産予定日12週以内の妊婦」は服用できません。

消化器内科の外来では、痛み止めを続けて飲んでいた方に胃潰瘍や消化管出血がよく見つかります。ロキソプロフェンの重大な副作用には、消化管出血や消化管穿孔(せんこう:胃腸に穴があくこと)も載っています。

血をサラサラにする薬(ワルファリンなど)や、一部の降圧薬・利尿薬とは飲み合わせの注意があります。持病で通院中の方は、買う前に薬剤師へ伝えてください。

カロナール(アセトアミノフェン)

注意すべきは肝臓です。処方薬の添付文書は、冒頭の「警告」で次の2点を挙げています。

  • 重篤な肝障害が起こるおそれがある
  • アセトアミノフェンを含む他の薬(市販薬を含む)との併用を避ける

アセトアミノフェンは、総合感冒薬の多くに入っています。かぜ薬と解熱鎮痛薬を一緒に飲むと、気づかないうちに量が重なります。市販薬を自己判断で増やしてはいけない理由がここにあります。

お酒を日常的に多く飲む方は、肝障害が起こりやすくなります。市販薬の添付文書にも「服用前後は飲酒しないでください」と書かれています。

一方で、胃や腎臓に対する制限は以前より緩やかになりました。2023年10月の添付文書改訂で、消化性潰瘍、重い腎障害、アスピリン喘息などが禁忌から外れています。現在の禁忌は、重い肝障害と、成分への過敏症の2つです。

「安全だから使ってよい」という意味ではありません。腎機能が落ちている方は、量を減らす・間隔をあけるなどの調整が必要です。

インフルエンザのとき、どれを飲む?

流行期によく受ける質問です。

小児については、はっきりした方針があります。2000年11月に日本小児科学会が「インフルエンザに伴う発熱に使うならアセトアミノフェンが適切で、非ステロイド系消炎剤の使用は慎重にすべき」との見解を出しました。厚生労働省も2001年5月に、ジクロフェナクをインフルエンザ脳炎・脳症の患者に使わないよう対応しています。

成人については、ロキソプロフェンとイブプロフェンの添付文書に、インフルエンザを理由とした禁忌の記載はありません。

とはいえ、インフルエンザかどうか分からない段階で市販薬を選ぶなら、アセトアミノフェンが無難です。15歳未満の方は、小児に使える製品を薬剤師に確認してください。

インフルエンザか新型コロナかを自宅で確かめたい場合は、両方を調べられる市販の抗原検査キットもあります。第1類医薬品のため、購入時には薬剤師から説明を受けることになります。

ただし、検査キットの結果だけで判断しないでください。陰性でも、感染していないとは言い切れません。高熱が続く、息苦しい、水分がとれないなどの場合は、結果にかかわらず受診してください。

市販薬で様子を見てよいとき、受診するとき

市販薬の添付文書には、やめどきの目安が書かれています。

薬服用をやめて相談する目安
ロキソニンS1〜2回服用しても症状がよくならない場合
イブA錠5〜6回服用しても症状がよくならない場合
カロナールA5〜6回服用しても症状がよくならない場合

ロキソニンSにはさらに、「3〜5日間服用しても痛み等の症状が繰り返される場合」は受診するよう書かれています。

次の場合は、市販薬で粘らずに受診してください。

  • 突然の激しい頭痛、胸の痛み、息苦しさがある
  • 黒い便が出る、みぞおちが痛む(胃からの出血の可能性があります)
  • 高熱が続く、または症状が長引いている
  • 頭痛薬を飲む日が増えてきた(薬の使いすぎで頭痛が悪化することがあります)

こんな人にはこの薬(目安)

状況選び方の目安
胃が弱い、胃潰瘍になったことがあるアセトアミノフェン。NSAIDsは医師・薬剤師に相談
腎臓の病気がある、高齢自己判断を避け、まず相談
お酒を毎日多く飲む、肝臓の病気があるアセトアミノフェンは自己判断で使わない
解熱鎮痛薬でぜんそくが出たことがある3つとも市販薬は服用できません。受診を
妊娠中・授乳中必ず医師に相談。NSAIDsは妊娠後期に使えません
15歳未満ロキソニンS・イブA錠は不可。小児用の製品を確認
歯痛、生理痛、ねんざなど炎症を伴う痛み(持病なし)NSAIDsが向いています
車を運転するイブA錠は服用後の運転ができません

まとめ

  • 解熱鎮痛薬は、NSAIDs(ロキソニン・イブ)とアセトアミノフェン(カロナール)に分かれます。
  • ロキソニンは、市販も処方も1錠60mgで同じです。違いは使える回数と量の幅にあります。
  • アセトアミノフェンは、市販が1日900mg、処方は痛みに対して1日4,000mgまで。差がもっとも大きい成分です。
  • かぜの熱に使う量は、処方薬でも控えめに決められています。
  • NSAIDsは胃・腎臓・ぜんそく、アセトアミノフェンは肝臓と成分の重複に注意します。
  • インフルエンザが疑われるときは、アセトアミノフェンが無難です。小児では特に重要です。
  • 添付文書の回数を飲んでも良くならなければ、受診の合図と考えてください。

市販薬は「弱い薬」ではなく、「自分で判断して安全に使える範囲に整えた薬」です。範囲を超えそうなときが、医師の出番になります。

参考資料

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