内科医師が具体的に解説する:腰が痛い、腰痛患者に対しての対応 内科?整形外科?

医療

「腰がだんだん痛くなってきた」

腰痛は身近な症状で、疫学研究から生涯有病率は約70〜80%とされています。

「腰が痛い=整形外科」と思う人が多いと思いますが、実は内科的疾患が原因である場合も少なくありません

本記事では、内科医師の視点から「内科を受診すべき腰痛」「整形外科を受診すべき腰痛」について、発症の特徴・注意ポイントとともに解説します。

覚えておくべきポイント

📌 重要なポイント
腰痛の原因は大きく「筋骨格系(整形外科領域)」と「内臓・血管・神経系(内科領域)」に分かれます。
放置すると命に関わる腰痛(がん、大動脈解離、腎盂腎炎など)を見逃さないことが最優先です。
「Red Flag(危険信号)」を知ることで、緊急受診の判断が可能になります。
特徴整形外科が主な原因内科が主な原因
痛みの性質動作時に増悪、安静で軽快することが多い安静時・夜間でも痛む体動と無関係なことも多い
随伴症状下肢のしびれ、筋力低下が多い発熱、血尿、腹痛、体重減少を伴うことがある
発症様式急性〜慢性、姿勢や動作に関連突然の激痛、徐々に増悪する持続痛
既往歴・リスク外傷歴、スポーツ、重労働高血圧、糖尿病、悪性腫瘍、免疫抑制
受診先整形外科を優先内科・救急を優先(緊急性判断が必要)

内科で見る腰痛疾患

大動脈解離・大動脈瘤破裂(最も緊急性が高い)

大動脈(主要な血管)が裂ける、または瘤が破裂することで生命の危機に直結する状態です。

腰に負担をかける動作と無関係に「突然発症」した場合に疑います。

ただし血圧の急上昇で発症する病気のため、腰に負担をかける動作と同じタイミングで発症する場合もある点に注意が必要です。

まず「動かさなければ痛くない→整形外科疾患安静でも痛みが続く→内科疾患の可能性」と覚えておきましょう。

  • 痛みの特徴:突然の「引き裂かれるような」激しい腰痛・背部痛
  • 高血圧の既往がある中高年に多い
  • 冷汗・意識消失・血圧低下を伴う場合がある
  • 左右で血圧差が出ることがある(解離の場合)
⚠️ 緊急:この症状が疑われたら即刻119番または救急受診してください。
「これまでに経験したことのない最悪の痛み」は大動脈解離かもしれません。それだけ強い痛みで発症します。

発症のタイプで命に直結する可能性もあります。緊急手術から入院安静・保存加療まで治療法の幅もあります。
高血圧の放置が一番のリスクです。普段から血圧をこまめに測定できるようにしましょう。

腎盂腎炎(じんうじんえん)・尿路感染症

腎臓や尿路に細菌感染が生じ、炎症を起こした状態です

徐々に痛みが悪化することが多く、悪寒を伴う発熱も見られるため、最初から内科を受診する方も多いです。

  • 腰の片側(側腹部〜腰部)に鈍痛〜叩打痛(コン・コンと叩くと響く痛み)
  • 38°C以上の発熱を伴う
  • 排尿時の痛み・頻尿・残尿感を伴うことが多い
  • 女性・高齢者・糖尿病患者に多い
  • エビデンス:発熱+腰部叩打痛+排尿症状の3徴は腎盂腎炎の診断精度が高い(感度・特異度ともに中〜高程度)

治療は抗生物質を中心とした投薬で改善します。

尿路結石(腎結石・尿管結石)

腎臓や尿管に石が詰まることによる強い痛みです。

突然発症することもありますが、動作と無関係に軽度の背部・腰部違和感が先行することが多いです。

痛みは強く冷や汗を伴うこともあり、姿勢を変えられないままうずくまって搬送されるケースもあります。

  • 突発的な激痛(疝痛:仙痛とも呼ぶ)で、背中〜腰〜鼠径部に放散する
  • 安静にしても痛みが治まらず、転がりまわるような痛み方が特徴的
  • 血尿(肉眼的または顕微鏡的)を伴うことが多い
  • 悪心・嘔吐を伴う場合がある

治療は痛みの緩和を最優先に行います。

NSAID坐薬は効果が速く確実に投与できるため、最初に使用されることが多いです。

詰まった石の大きさで自然に排石されるかどうかの見込みが立ちます。

自然に排石されないようなら泌尿器科で何らかの処置が必要になります。

急性膵炎

膵臓(すいぞう)内で消化酵素が活性化し、膵臓自身を消化・破壊する炎症状態です。

飲酒や胆石が主な原因で、数時間かけて痛みが増強し、嘔気・嘔吐を伴うことが多いです。


  • 上腹部〜背部にかけての持続する強い痛み(みぞおちから背中への「帯状の痛み」が特徴的で、前屈みになると少し楽になることがある)
  • 悪心(吐き気)・嘔吐を高頻度で伴う(食事摂取で痛みが増強することも多い)
  • 発熱を伴うことがある(38°C前後。ただし発熱が目立たない初期例もある)
  • 飲酒習慣のある中年男性・胆石症のある中高年女性に多い(2大原因はアルコールと胆石で全体の約7〜8割を占める)
  • エビデンス:上腹部痛+血液検査でのアミラーゼまたはリパーゼの上昇(基準値の3倍以上)+画像所見(CTなど)の3項目のうち2項目を満たせば診断される(改訂Atlanta分類;国際的に広く使用されている診断基準)。なかでもリパーゼはアミラーゼより感度・特異度ともに高いとされる(エビデンスレベル高)

注意点・例外:重症例では膵壊死や多臓器不全に進行することがあり、入院・絶食・点滴管理が必要です。軽症に見えても急速に悪化するケースがあるため、自己判断で様子を見ることは避け、早期に医療機関を受診してください。慢性膵炎に移行すると、糖尿病や消化吸収障害を引き起こすこともあります。

治療原則として絶食・補液(点滴)による膵臓の安静が基本です。

原因(胆石・アルコールなど)の除去や、重症度に応じた入院管理が中心となります。

内科・整形外科両方で対応が必要となる疾患

悪性腫瘍による転移性脊椎病変

がんが脊椎(背骨)に転移し、骨を侵食することで生じる痛みです。

がんの根本的な治療に関しては、原発巣によって治療の中心となる科が異なります。

原発巣が不明な場合は、内科中心に検査を進めます。

痛み以外に手足のしびれなどの末梢神経症状が出ている場合は、なるべく早めの整形外科の受診が必要です。

治療が遅れると神経症状の改善が困難になる場合もあります。

  • 夜間や安静時も軽快しない持続する腰痛
  • がん(乳がん、前立腺がん、肺がん、血液がんなど)の既往がある方に注意
  • 体重減少・食欲不振・倦怠感を伴う
  • 原発不明の場合もあるため、50歳以上で説明のつかない腰痛には注意が必要

原発巣によって治療法を変わります。

痛みに関しては麻薬を使用した鎮痛も必要になる場合があります。

化膿性脊椎炎(感染性脊椎炎)

細菌が脊椎に感染することで炎症・骨破壊が生じます。発熱を伴うため、内科を先に受診するケースが多いと思います。

ただし脊椎にたまった膿を除去する手術が必要になるケースもあるため、整形外科中心の加療が適切な場合もあります。

  • 免疫が低下した方(糖尿病・透析患者・ステロイド使用者など)に多い
  • 発熱+持続する腰痛の組み合わせ
  • 血液培養・MRI検査が確定診断に有用

基本は抗生剤中心の投薬とリハビリです。

感染部に膿がたまって大きくなるようであれば、外科的に取り除く必要もあります。

骨粗鬆症による圧迫骨折(内科・整形双方に関連)

骨がもろくなることで、軽微な外力でも椎体(背骨の骨)が潰れることがあり、「いつのまにか骨折」とも呼ばれます。

脊椎の圧迫骨折は整形外科が中心になって治療をします。骨粗しょう症に関しては整形外科や内科も関与する場合があります。

  • 高齢女性・ステロイド長期使用者に多い
  • 尻もち・くしゃみ・軽い荷物を持ち上げた後に急激な腰痛
  • 骨粗鬆症の治療は内科(骨代謝内科)が担うこともある

治療法は基本的に短期間の安静とリハビリが中心です。

炎症性腰痛(強直性脊椎炎など)

免疫の異常により脊椎に慢性的な炎症が起こる疾患群です。

全身に症状があることがあり、内科中心に加療を進めることが多いです。症状の場所によっては整形外科などと協力して治療にあたります。

  • 若年男性(10〜30代)に多い
  • 朝のこわばり(30分以上続く)、安静で増悪・運動で改善
  • 夜間に痛みが強くなる傾向がある
  • HLA-B27が陽性であることが多い(遺伝子マーカー)
  • リウマチ科・膠原病内科を受診することが望ましい

免疫抑制剤などの治療が主に行われますが、原因疾患によって種類が変わります。

整形外科を受診すべき腰痛のパターン

ぎっくり腰(急性腰痛・筋筋膜性腰痛)

腰の筋肉・靱帯・関節に急性の損傷が起こった状態です。最も頻度が高い腰痛の原因です。

「魔女の一撃」とも呼ばれています。症状のきっかけとなった動きが原因ではなく、普段の姿勢の癖や負担のかけ方の蓄積から起こります

  • 重い物を持った、急に体をひねったなど明確なきっかけがある
  • 腰部の局所的な痛み、前屈・後屈などの動作で増悪
  • 発熱・排尿症状・下肢神経症状を伴わない
  • 数日〜数週間で自然回復することが多い(エビデンス:急性腰痛の85%以上は非特異的)

治療は短期間の安静とリハビリです。

腰椎椎間板ヘルニア

椎間板(背骨の間のクッション)が飛び出して神経を圧迫する状態で、痛みに加えてしびれなどの神経症状を伴います。

  • 腰痛に加え、お尻〜足にかけての放散痛(坐骨神経痛)を伴う
  • 前かがみで悪化、体を反らすと楽になることがある
  • 重症例では足の感覚障害や筋力低下を伴う
  • MRIで確定診断される

神経症状の悪化があるようであれば、手術加療が必要になります。

腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

加齢により背骨の神経の通り道(脊柱管)が狭くなる状態です。

年齢に伴い悪化していくことが多い病気です。

  • 間欠性跛行(かんけつせいはこう):しばらく歩くと足がしびれて歩けなくなり、少し休むと回復する
  • 前かがみになると楽になる(買い物カートに寄りかかると楽)
  • 高齢者に多い

こちらも症状が悪化するようなら手術が必要になる場合があります

変形性腰椎症・すべり症

加齢による骨や関節の変形によって生じる慢性腰痛です。加齢によって起こりやすくなります。

  • 長年の腰痛の既往がある中高年〜高齢者
  • 動作に伴う局所的な腰痛、安静で改善
  • X線・CTで評価される

基本は安静とリハビリが中心となります。

腰椎疲労骨折(分離症)

特にスポーツをする若年層に多い、椎弓(背骨の後部)の疲労骨折です。

  • 成長期の若年アスリートに多い
  • 腰部の局所圧痛、体を反らすと痛い(伸展痛)
  • 早期診断にはMRI・CTが有用

安静が基本治療になります。

診察時に特に注意すべき「Red Flags(危険信号)」

以下の症状・徴候が1つでも存在する場合は、緊急度が高い疾患を除外する必要があります。

Red Flag考えられる疾患推奨対応
突然の「最悪」の腰〜背部痛大動脈解離即刻救急搬送
発熱(38°C以上)+腰痛腎盂腎炎・化膿性脊椎炎・硬膜外膿瘍内科・救急を受診
体重減少(6か月で5%以上)悪性腫瘍・結核性脊椎炎内科を受診
安静時・夜間の増悪悪性腫瘍・感染・炎症性疾患内科を受診
下肢麻痺・膀胱直腸障害馬尾症候群(緊急手術適応あり)整形外科・救急を受診
血尿+側腹部痛尿路結石・腎盂腎炎泌尿器科・内科を受診
がんの既往あり転移性脊椎腫瘍内科・腫瘍科を受診
ステロイド長期使用・免疫低下化膿性脊椎炎・圧迫骨折内科を受診

診察で行われる主な検査

腰痛の時に行われる診察方法と検査です。診察は主に整形外科疾患が疑われるときに行われます。

内科系の病気が疑われる状況では叩打痛、腹部の圧痛などを確認することが多いです。

身体診察

  • 叩打痛(CVA tenderness):腰部を軽く叩いて響く痛みは腎臓疾患を示唆
  • SLRテスト(Straight Leg Raise):仰向けで足を伸ばしたまま上げ、坐骨神経痛を評価
  • 腱反射・感覚・筋力テスト:神経障害の程度を評価
  • 腹部触診:腹部大動脈瘤の拍動性腫瘤の有無を確認

内科由来の腰痛が疑わしい場合に採血などを行います。

検査

  • 血液検査:白血球数・CRP(炎症)、腫瘍マーカー、PSA(前立腺がん)など
  • 尿検査:血尿・白血球・細菌尿(尿路感染・結石の鑑別)
  • 画像検査:X線(骨折・変形)、CT(結石・解離)、MRI(椎間板・感染・腫瘍)
  • 超音波検査:腎臓・腹部大動脈の評価(外来で迅速に可能)

診療科の選択に迷ったときのヒント

✅ まず「かかりつけ医(内科・総合診療科)」に相談するのが最も安全です。
かかりつけ医は問診・診察・基本検査を行い、緊急性を判断したうえで適切な科に紹介します。
「整形外科的か内科的か」の鑑別は、患者さん自身が判断するのが難しい場合もあります。
  • 熱・体重減少・血尿・吐き気を伴う → まず内科
  • 明らかな外傷や動作誘発性の痛み → まず整形外科
  • 突然の激烈な痛み(過去最悪レベル) → 即救急
  • 判断に迷う → かかりつけ内科医や総合診療科に相談

投薬、コルセットなどの効果・注意点

  • NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェンなど):腎機能低下患者・消化管潰瘍の既往がある方は要注意。尿路結石に対しては最初の鎮痛として使用されます。
  • コルセット:腰を安静にするためのサポート品。急性腰痛に対する過剰な安静・コルセット長期使用は慢性化を促すことがある(エビデンス:ガイドライン上は積極的な活動継続が推奨される)
  • 温熱・冷却:急性期(48時間以内)の炎症期はアイシング、慢性期は温熱が一般的だが、感染が疑われる腰痛の温熱は避ける
  • 安静は基本的に最低限にする(目安は1-2日以内)。その後は痛みが強くなりすぎない程度に活動をする。

記事を読んだ後にできる行動変容の例

実践しやすい一例をあげました。

もし腰痛が出たとき、これらに当てはまるようなら実践してみてください。

状況推奨される行動
腰痛が突然発症し、「これまでで最悪」の激痛→ 即刻119番・救急受診(大動脈解離の除外が最優先)
腰痛に発熱(38°C以上)が伴う→ 数日以内に内科を受診(腎盂腎炎・化膿性脊椎炎を疑う)
腰痛と血尿・側腹部の激痛がある→ 内科または泌尿器科を受診(尿路結石の可能性)
がんの治療中に新たな腰痛が出現した→ 主治医に連絡(転移の可能性を評価してもらう)
重い物を持った後の急な腰痛(発熱なし)→ まず安静・鎮痛薬、改善なければ整形外科を受診
長年の腰痛に加え、歩くと足がしびれる→ 整形外科を受診(脊柱管狭窄症の評価)
糖尿病・ステロイド使用中で腰痛が長引く→ 内科を受診(感染性脊椎炎の除外が必要)
50歳以上で原因不明の腰痛が2〜4週間以上続く→ かかりつけ医に相談(悪性腫瘍のスクリーニングを)

まとめ

腰痛に対して、内科に行くか整形外科に行くかを解説しました。

まずは腰痛が出たときの状況で判断します。そのうえで腰痛以外の症状の有無を確認します。

姿勢や動作に関係のない突然の強い腰痛は大動脈解離の可能性があり要注意です。

発熱や腹痛、嘔吐などを伴う時も整形外科的な腰痛よりも内科疾患由来の腰痛の可能性が高いので内科の受診をしましょう

姿勢や動作で痛みが変わる腰痛は内科的疾患の可能性が低く、まず安静で対応し、症状が続く場合は整形外科を受診してください。

多くは整形外科的な腰痛ですが、内科疾患由来の腰痛の特徴を把握し、早めに適切な対応ができるようにしましょう。

参考文献・ガイドライン

本記事の内容は以下のエビデンスおよびガイドラインを参考に作成されています。

  • 日本整形外科学会・日本腰痛学会監修:腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版).南江堂,2019年
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