内科医師が解説:この腹痛、ほっといて大丈夫?病院にすぐ行くべき症状と注意点

医療

おなかが痛い

皆さんも経験したことが一度はあると思う症状です。

厚生労働省の2023年の発表によると、2022年における症状別の延べ患者数では、腹痛・胃痛を訴えた人は約200万人と報告されています。

また、プライマリ・ケア診療所における症候及び疾患の頻度順位の同定に関する研究より、腹痛に関連する疾患での受診は約6%でした。

最多の上気道炎症状に次いで第2位の頻度です。

さらに、救急外来受診者のうち5~10%(米国では8.4~11%、国内大学病院では8.1%)が、腹痛を主訴として受診しているといわれています。

このように腹痛を訴える人は多い一方で、病院を受診すべきかどうか悩むケースも少なくありません。

安易な自己判断は避ける必要がありますが、本記事では内科医師の視点から、受診が必要な腹痛と自宅で様子をみてもよい腹痛の目安、ならびに注意点について解説します。

受診の判断基準は「随伴症状の有無」と「痛みの変化」

腹痛の多くは一過性のものですが、命に関わる「見逃してはいけない腹痛」の可能性があるときは次のような場合です。

  • 激痛で動けない場合
  • 徐々に痛みが強くなり、和らぐことがない
  • 発熱を伴う
  • 嘔吐や下痢がひどく水分もとれない

このような状況であれば、速やかに医療機関を受診してください。


即受診が必要な「レッドフラッグ(危険信号)」

以下の症状がある場合は、重篤な疾患(消化管穿孔、血管病変、急性腹症など)の可能性があるため、夜間でも救急外来を検討してください。

  • 激痛で歩けない、姿勢を変えられない
  • 冷や汗、顔面蒼白、血圧低下を伴う
  • 腹部が板のように硬くなっている(反跳痛:押して離す時に響く痛み)(痛みで力がずっと入りっぱなし
  • 吐血や下血(黒色便)がある

上記であっても病院での初期対応や診察の結果、重篤ではなかったということもあります。

その場合でも、数日は症状の変化がある可能性が高いので要注意です。

場所別・注意すべき疾患の目安

腹痛の場所は原因を特定する重要な手がかりです。特に「痛みが移動する」場合は要注意です。

部位疑われる主な疾患受診の緊急性特徴的なサイン
右下腹部虫垂炎(盲腸)中〜高最初はみぞおちが痛み、徐々に右下へ移動する
右上腹部胆石症、胆嚢炎食後の激痛、背中まで突き抜けるような痛み
左下腹部憩室炎、便秘低〜中発熱を伴う場合は炎症の可能性あり
腹部全体腸閉塞、胃腸炎高(腸閉塞の場合)嘔吐を伴う、排便・排ガスが全く出ない

これらの表はあくまで消化器疾患に限っています。

特にみぞおち痛(心窩部痛)は、消化器以外の疾患でも初めに痛みとして感じやすい場所であるため、要注意です。

代表例は、心筋梗塞、肺炎、糖尿病性ケトアシドーシスなどです。

このケースに対しては別記事で詳細に解説しています。よろしければご覧ください

胃が痛い みぞおちの痛みの正体:食事は? ロキソニンの影響? 薬はどうする?

夜間休日受診は様子を見て良いケースと病院受診の判断をするタイムリミット

腹痛の原因は腸管蠕動痛(おなかがゴロゴロする)であることが大半です。

腸が動くと中の消化物も動き、大腸から排出されやすくなる=不消化便・下痢が出てきます。

この流れがあれば、むしろ重篤な疾患の可能性が減ります。

もちろん、下痢が続いて水も飲めない・動けないほど症状が続くようなら受診が必要になりますが、日中の受診でも間に合うことが多いです。

症状自体が軽く、まだ口から食事・水分が取れている状況であれば、夜間休日受診はしなくてもいいでしょう。

ただし、数日以上状況が変わらず、痛みなど続いているようなら日中の医療機関受診を考えましょう。

「少しお腹が緩い」「ガスが溜まっている」と感じ、以下の条件を満たすならしばらく様子を見ても大丈夫です。

  • 水分が摂取できている
  • 痛みが増強せず、波がある(間欠的)
  • 排便やガスによって痛みが軽くなる

もともとおなかが弱いからと、数か月症状があってもなかなか受診しない方もいます。

忙しくて病院に行く時間も取れないという事情もありますが、2週間以上症状が変わらないような状況であれば、一度は病院受診をしましょう。

症状が軽度でも長く続く場合、癌などをはじめとした慢性進行性の疾患もあるため、なにより異常がないことを確認してもらうことが大事です。

まとめ

腹痛について、危険なパターンや様子を見てよい場合について解説しました。

症状が強い場合はもちろんですが、持続する腹痛や下痢を伴わない腹痛はなるべく早めの病院受診を考えたほうが良い場合が多いです。

このケースは時間とともに自然に改善する腹痛ではない可能性が高いためです。

原因によっては絶飲食=長時間の点滴が必要であり入院する場合や、手術まで考える病気の可能性があります。

下痢があっても頻回で嘔吐も伴い、水分も取れない状況が1日続くようなら、病院受診を考えたほうがいいケースです。

こちらは脱水症のため点滴治療が必要になるためです。

ある程度の期間症状が持続するような場合は、日中の病院を受診して検査をしていきましょう。

結果的に大きな病気はないこともあります。それでも安心材料が得られることがとても大事なことです。

腹痛はこれからも経験することが多い症状の一つです。

症状が比較的強くても、冷静に対応できるように、この記事の内容をもとに実行してみてください。以下が行動の提案になります。


行動への提案

  1. 痛みのスコアリング: 今の痛みを10段階(0は無痛、10は人生最大の痛み)で評価し、7以上なら迷わず受診してください。
  2. 症状のメモ: 受診時は「いつから」「どこが」「どのように(ズキズキ、シクシク)」痛むか、熱はあるかを伝えると診察がスムーズです。
  3. #7119の登録: 判断に迷う夜間のために、救急安心センター(#7119)を電話帳に登録しておきましょう。

情報参照元:

  • 日本消化器病学会「患者さん向けガイド」
  • 厚生労働省「上手な医療のかかり方」
  • 日本救急医学会「腹痛診療ガイドライン」

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