コロナ後遺症はいつ治る?倦怠感・ブレインフォグの原因と新しい治療薬

医療

「コロナにかかってから、もう数ヶ月経つのに体がだるい」

「以前のように頭が働かない、言葉がすぐに出てこない」

「夜眠れない日が続いている」

こうした症状が新型コロナウイルス感染後も長く続く場合コロナ後遺症(Long COVID)の可能性があります。

「気のせいでは」「そのうち治る」と自己判断で放置されがちですが、実際にはどのくらいの期間続くものなのか、そして治療の選択肢はあるのか。一般内科医の立場から、最新のデータをもとに整理します。

2026年6月、日本の研究グループが世界初となるコロナ後遺症治療薬の可能性を発表し、注目を集めています。また認知行動療法の具体的な手順についても紹介します。

この記事では「いつ治るのか」という回復の見通しと、「何ができるのか」という治療の選択肢の両方を解説します。

結論:症状ごとに「治りやすさ」が違います

  • 倦怠感:多くは数ヶ月〜1年程度で軽減。ただし一部は長期化(後述)
  • ブレインフォグ(思考力低下)時間とともに改善する傾向はあるが、完全には消えない人
  • 不眠:3つの中で最も自然には治りにくい症状

「ただ待っていれば治る」と一括りにできないのがコロナ後遺症の特徴です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

倦怠感はいつ治る?

倦怠感はコロナ後遺症の中で最も多い症状です。回復までの期間には、コロナ感染症で入院したかどうかで大きな差があります。

重症度平均持続期間
入院しなかった患者平均4ヶ月(3.6〜4.6ヶ月)
入院した患者平均9ヶ月(7.0〜12.0ヶ月)

ただし、これは「平均」の話です。実際には個人差が非常に大きく、長期的なデータを見ると以下のような経過をたどります。

  • 感染後9ヶ月時点で倦怠感がある人のうち、約半数は2年以内に回復
  • 一方で残りの半数は長期化し、3.5年後でも約25%が何らかの症状を持続
  • 感染後10週間時点では85.4%、23週間時点でも78.7%「重度の倦怠感」を報告

つまり、発症から半年近くは「重い症状が続いて当たり前」であり、焦って自分を責める必要はありません。一方で、抑うつ症状を併発している人ほど倦怠感が長引きやすいというデータもあり、心の不調を併せ持つ場合は早めの相談が望まれます。

ブレインフォグ(思考力低下)はいつ治る?

「頭にモヤがかかったように考えがまとまらない」状態をブレインフォグと呼びます。

会議の内容を追えない、メールの文章がまとまらない、人や物の名前がすぐに出てこない――こうした形で現れることが多く、本人も周囲も「コロナ後遺症」と気づきにくいのが特徴です。

感染者の20〜40%にこの症状が見られるとされ、客観的な検査でも、症状が12週間以上続く人では中等度の認知機能低下が確認されています。

  • 感染後1年時点:39.6%が「集中できない」、32.3%が「言葉が出てこない」と回答
  • 入院した患者では、6ヶ月後でも認知機能の低下が対照群と比べて有意に持続
  • 日本国内の調査では、症状の頻度は感染後3ヶ月でピークを迎え、18ヶ月後には大幅に減少するものの完全には消えない

全体としては「時間とともに軽くなる」傾向があるものの、油断はできません。長く続く場合は、慢性疲労症候群(ME/CFS)との見分けも含めて専門的な評価が必要です。

不眠はいつ治る? ―― 実は最も自然に治りにくい症状

3つの症状の中で、医学的に最も注意すべきなのが不眠です。

コロナ後遺症患者の78%に不眠が認められ、うち30%が中等度、18%が重度とされています。そして不眠は、倦怠感やブレインフォグと違って「時間が経てば自然に良くなる」割合が低いことが、追跡調査からわかっています。

平均9ヶ月にわたる追跡調査では、不眠の重症度を示すスコア(ISI)が統計的にはわずかに改善したものの、最初の評価でも追跡時でも「軽度の不眠」の範囲にとどまり、臨床的に意味のある改善とは言えない水準でした。

さらに興味深いのは、不眠とコロナ後遺症の関係が双方向であるという点です。

  • 感染前から不眠があった人は、コロナ後遺症になるリスクが1.33
  • 逆にコロナ後遺症になった人は、新たに不眠を発症するリスクが2
  • 感染から約3年経過した調査でも、睡眠時間の短縮や睡眠の質の低下が持続

不眠は「そのうち治る」と様子を見るより、早めに対策を始めることが推奨される症状です。

回復しやすさを左右する要因

同じコロナ後遺症でも、回復のスピードには個人差があります。研究で指摘されている主な要因は以下の通りです。

  • 入院の有無:入院した人は、しなかった人より症状が長引きやすい
  • 性別:女性は男性より神経・認知系の症状(ブレインフォグなど)が出やすい傾向
  • 抑うつ・不安の有無:精神的な不調があると症状が長引きやすい
  • 感染した時期:流行初期の変異株(オリジナル株、アルファ株)に感染した人の方が、後年の変異株より認知機能への影響が大きい傾向

「自分だけ治りが遅い」と不安になる必要はありません。これらの要因が重なれば、回復に時間がかかるのは医学的にも自然なことです。

【2026年最新】世界初のコロナ後遺症治療薬の可能性

ここまでは「自然経過」の話でしたが、2026年6月、治療の選択肢を広げる重要な研究結果が日本から発表されました。

東京慈恵会医科大学と横浜市立大学の共同研究グループが、コロナ後遺症の倦怠感・抑うつ症状の原因と治療薬の両方を突き止めたと発表したのです。

何が原因だったのか

研究によると、コロナ感染をきっかけに、もともと体内に潜伏している「ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)」が再活性化し、SITH-1(サイス・ワン)というタンパク質を作り出すことがわかりました。このSITH-1が、脳内のアセチルコリンという神経伝達物質を減少させ、倦怠感や抑うつ症状を引き起こしていると考えられています。

実際に、コロナ後遺症患者の約7割でこのSITH-1に対する血中抗体が陽性であることが確認されました。

どんな薬が効いたのか

脳内のアセチルコリンを増やす薬として、すでに認知症治療薬として広く使われているドネペジル(商品名:アリセプト)に着目し、二重盲検ランダム化比較試験(最も信頼性の高い臨床試験のデザイン)を実施したところ、抗SITH-1抗体が陽性の患者で、倦怠感と抑うつ症状が有意に改善することが示されました。

すでに認知症治療薬として長年使われてきた薬を別の病気に応用する「ドラッグリポジショニング」という手法のため、比較的短期間での実用化が期待されています。

注意点:この結果は「抗SITH-1抗体が陽性の人」という特定のグループに対するものです。コロナ後遺症のすべての方に同じように効果があるとは限りません。原因は一つではなく、複数のメカニズムが関わっていると考えられています。

実際、過去には別の臨床試験で「ドネペジルはコロナ後の疲労やブレインフォグに有効とは言えない」とする結果も報告されています。

今回の研究が画期的なのは、「誰に効くか」を血液検査で見分けられる可能性を示した点にあります。今後、SITH-1抗体検査とドネペジル投与を組み合わせた治療が実用化されれば、これまで「原因不明」とされてきた症状に、客観的な根拠を持った治療選択肢が生まれることになります。

今すでにある治療の選択肢

新しい治療薬の実用化を待つ間も、すでにエビデンスのある対処法があります。症状別に整理します。

倦怠感に対して

  • 認知行動療法(CBT):オンラインプログラムでも倦怠感・集中力ともに有意に改善することが確認されています
  • 身体・精神リハビリテーションの組み合わせ:抑うつ症状の軽減や生活の質の改善に有効
  • 運動療法:週3〜5回の軽い有酸素運動が身体機能の改善に役立つ一方、無理な運動はかえって症状を悪化させることがあるため、「ペーシング」(疲れる前にやめる調整)が重要です
  • 薬物療法:抗うつ薬の一種であるフルボキサミン(デプロメール)が倦怠感を軽減するというデータがあります

認知行動療法の一例

PEM(労作後倦怠感)を持つ患者に対するペーシング療法の臨床実践の一例です。クラッシュを避けながら活動可能量を漸増させることが目標です。


Phase 0:初診・患者タイピング(第1回外来)
患者タイプの見極め

まず行動分析で患者を2タイプに分類します。

タイプA(過活動型)タイプB(過制限型)
「動けないのが怖い」「疲れるのが怖い」
良い日に活動しすぎてクラッシュ安全なレベルでも活動回避
→ 上限設定が主介入→ 活動許可・体験が主介入

スクリーニング質問例:

  • 「調子の良い日は何をしていますか?」
  • 「疲れが出ることへの恐怖を0〜10で表すと?」
  • 「寝たきりになることへの恐怖は?」

Phase 1:完全安静期(第1〜8週)
目標

倦怠感の「底値(プラトー)」を把握する

具体的指示

日常生活の制限レベル設定:

  • 入浴はシャワーのみ(湯船不可)
  • 会話は1回15分以内
  • スマートフォン・テレビは合計30分/日
  • 外出は最低限(受診のみ)

毎日記録する項目(症状日誌):

【日付】
起床時のしんどさ(0〜10):
午後のしんどさ(0〜10):
就寝前のしんどさ(0〜10):
今日行った活動:
睡眠で翌朝回復したか(Yes/No):
プラトー判定基準

2週間連続で「起床時スコアが±1以内で安定」していれば底値とみなす


Phase 2:活動開始判定(外来診察)
バスコア評価

バスコア(Bell Disability Scale)で70点前後を確認してから活動を開始します。

スコア状態の目安
50点軽作業なら可能、長時間は不可
70点← 活動開始の目安
80点数時間の軽労働が可能

⚠️ 「元気な日があった」という主観ではなく、2週間の平均スコアで判定すること


Phase 3:最小活動導入期(第9〜16週)
活動の選定:「義務より喜び」の原則

患者に以下を聞いて活動を選ぶ:

「体調を気にせず自由にできるとしたら、何が一番やりたいですか?」

  • 散歩より「庭の花を見にいく」
  • ストレッチより「好きな音楽を聴きながら窓の外を眺める」
  • …など、本人が心から望む活動を最優先にする

いやいや散歩するのは×。好きなことを優先にすることが大事です。

初期活動量の設定

原則:現時点でできると思う量の50%から始める

活動例初期設定の例
散歩玄関先に出る(1〜2分)
ストレッチ寝たまま足首を動かす(3回)
会話・通話5分以内
読書・スマホ10分
活動後の記録(予測精度トレーニング)
【活動記録シート】
活動内容:
実施時間:
活動前の疲労度(0〜10):
活動直後の疲労度(0〜10):
2時間後の疲労度(0〜10):
翌朝の疲労度(0〜10):
睡眠で回復したか(Yes/No):

▼自己予測
「この活動の後、翌日は___点になると思う」→ 実際は___点

予測と実際のズレを毎回確認することで、自己モニタリング精度が上がります


Phase 4:クラッシュの体験と理解(重要ステップ)
なぜ「一度経験させる」のか

患者が「疲れた感じ」と「PEMのクラッシュ」を区別できるようにするため、安全な環境下で軽微なクラッシュを体験してもらいます。

実施タイミング
  • Phase 3の活動が安定してきた頃
  • 患者が「もう少しやれそう」と感じ始めた時
手順
  1. 普段の活動量を1.5倍に設定した日を意図的に作る
  2. 翌日〜翌々日の症状を詳細に記録させる
  3. 次の外来でその感覚を言語化する

外来での確認質問:

  • 「その疲れは普通の疲れと何が違いましたか?」
  • 「いつ頃から悪くなりましたか?(遅発性の確認)」
  • 「何日で戻りましたか?」

これにより患者はクラッシュのシグナルを事前に察知する感覚を身につけます


Phase 5:活動漸増期(第17週〜)
増量の原則
  • 増量は2週間同一量で安定してから
  • 1回の増量は10〜20%以内
  • 「調子が良い日」に増やすのは禁止(タイプAへの特別注意)
認知的アプローチの並走

タイプ別に以下の認知介入を加えます:

タイプA(過活動型)への介入:

  • 「良い日の活動量」と「クラッシュ日の関係」をグラフ化して見せる
  • 「活動の貯金は使いすぎると破産する」というメタファーを使う

タイプB(過制限型)への介入:

  • 活動しなかった日の翌日スコアを記録させ、「安静が必ずしも回復を意味しない」ことを実データで示す
  • 「楽しい活動の許可証」を明示的に処方する(文書で渡す)

外来フォロー頻度の目安
時期頻度主な確認事項
Phase 0〜12週間ごとプラトー判定、記録習慣の確認
Phase 2〜3毎月バスコア、活動選定、予測精度
Phase 4クラッシュ直後に追加受診体験の言語化、復帰ペースの設定
Phase 5〜1〜2か月ごと漸増ペース、認知修正の進捗

注意事項(全フェーズ共通)
  • 有酸素運動(グレーデッドエクササイズ)はPEMを悪化させる可能性があり、このプロトコルでは推奨しない
  • 「頑張れば治る」という励ましは禁忌
  • 家族・職場への説明文書を必要に応じて作成する
  • 精神科・心療内科との連携は「うつの合併評価」目的のみとし、「心因性」として扱わない

ブレインフォグに対して

  • 特定の薬剤の組み合わせ療法や、神経保護作用が期待される治療法で改善が報告された例があります
  • 注意力に作用する薬剤の研究も進められていますが、現時点では有効性が確立されておらず、臨床試験段階です

不眠に対して

  • 睡眠衛生の見直しが基本:規則正しい起床・就寝時間、カフェイン・アルコールを控える、寝る前のスマホ画面を避けるなど
  • 他の原因を除外した上での補助的な対策が検討されることがあります
  • 認知行動療法(不眠症型):カウンセリングを通じた改善が推奨されています

なお、研究段階で「明確な効果が確認できなかった」治療法(特定の抗うつ薬、特定の抗体医薬、プロバイオティクス、コエンザイムQ10、高圧酸素療法など)も複数報告されています。

インターネット上には根拠の乏しい民間療法も多く出回っているため、自己判断で高額な治療に手を出す前に、必ず医師に相談してください。

何科を受診すればいい?

コロナ後遺症は症状が多岐にわたるため、専門の「コロナ後遺症外来」を設けている医療機関もありますが、まずはかかりつけの内科に相談するのが現実的な第一歩です。

症状や検査の結果に応じて、必要があれば専門外来や心療内科などへ紹介してもらう流れになります。一人の医師が継続して症状の変化を診ていく「かかりつけ医との継続的な関係」が、最終的に患者さんの満足度を高めることもわかっています。

目安として、感染から4週間以上、だるさ・思考力低下・不眠などの症状が続いている場合は、一度受診を検討してください。

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まとめ

コロナ後遺症の経過をまとめると、次のようになります。

  1. 倦怠感とブレインフォグは、多くの場合時間とともに改善しますが、一部の方では長期化します
  2. 不眠は自然には治りにくく、早めの対策が望ましい症状です
  3. 2026年、原因の一端と新しい治療薬の可能性が日本の研究で示されましたが、すべての人に効くわけではない段階です
  4. 今すでにできる対策として、認知行動療法・適切なリハビリ・睡眠習慣の見直しなどにエビデンスがあります

コロナ後遺症は、症状の幅が広く、まだ研究が発展途上の分野です。だからこそ「気のせい」「我慢すれば治る」と自己判断せず、長引く不調があれば一度医療機関に相談することをおすすめします。

参考資料

  • 東京慈恵会医科大学・横浜市立大学共同研究グループ「新型コロナ後遺症の倦怠感・抑うつ症状のメカニズムと治療薬を発見」(2026年6月)、Frontiers in Pharmacology掲載
  • Global Burden of Disease Long COVID Collaborators, JAMA(2022年)
  • O’Regan E, et al. JAMA Network Open(2024年)
  • Hartung TJ, et al. Clinical Medicine(2024年)
  • Hampshire A, et al. New England Journal of Medicine(2024年)
  • Hansell-Robinson J, et al. Journal of Clinical Medicine(2025年)
  • 堀M, 他「Yao COVID-19研究」Journal of Medical Virology(2026年)
  • リハビリテーション介入に関するシステマティックレビュー、JAMA Network Open(2023年)

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