心電図に異常:健診でいわれたときに考えること、内科医が解説  第1回:総論・期外収縮

健診・検診関連

心電図で異常があります

健康診断の結果説明の時に、このようなことを言われた経験はありませんか。

心電図=心臓の検査異常→重病

このように思われる方も多いと思います。

健診の心電図検査で「異常あり」と判定されると、多くの受診者は強い不安を感じます。

しかし、実際には治療が不要な「正常範囲内の個人差」も多く含まれています。

今回、内科医の視点から健診でよく指摘される心電図異常について解説していきます。

大前提から、過度に心配しないでよい所見、専門医の診察・追加検査が望ましいものまでお伝えしていきます。

今回第1回目として、「健診における心電図の意義」および「期外収縮」について解説します。


大前提:健診における心電図の役割とは?

心電図の判定は、病気の診断ではなく「精密検査が必要かどうかの仕分け」

「異常あり=即、心臓病」ではありません。

中には放置すると脳梗塞や心不全のリスクを見逃す可能性があるものも含まれるため、判定区分に基づいた適切な行動が不可欠になります。

重要ポイント3点

  1. 「所見あり」の約8割は、直ちに治療が必要なものではない。
  2. 特に注意すべきは「不整脈(心房細動)」と「虚血(ST-T変化)」。
  3. 判断の鍵は「自覚症状の有無」と「過去の心電図との比較」。

たとえるならば、、、

心電図検査は、家の火災報知器のようなものです。

火災報知器は、本物の火事(心臓病)だけでなく、料理の煙(一時的な乱れや体質)でも鳴ることがあります。鳴ったからといってパニックになる必要はありませんが、「本当に火が出ていないか」を確認(精密検査)することは、家(命)を守るために欠かせません。


主要な異常所見と対応(比較表)

カテゴリ主な所見名内容と対応の目安
経過観察で良いことが多い期外収縮(上室性)、右脚ブロック、左軸偏位脈が飛ぶ感覚がなければ、多くは加齢や体質によるもの。年1回の定期健診でOK。
精密検査を推奨期外収縮(心室性)、ST-T変化、異常Q波、左脚ブロック心筋梗塞や心筋症の疑い。一度は循環器内科で心エコー検査を。
治療検討が必要心房細動、著しい頻脈・徐脈脳梗塞の原因になるため、症状がなくても必ず専門医を受診。

続いて、期外収縮について解説していきましょう


期外収縮:頻度によっては精密検査を考慮

期外収縮とは本来の心臓のリズムより早いタイミングで余分な拍動が入る不整脈のことです。

脈が飛ぶ、ドキッとするというような感覚があります。

期外収縮はその脈の発生源が心臓のどこから出ているかで分類されます。

上室期外収縮は心房や房室接合部から、心室期外収縮はヒス束分岐部以下から発生しています。

心電図のQRS波形から発生源を推定し、器質的な心臓病があるかどうかを評価します

上室性期外収縮

頻度によって以下のように分類されており、正常な人でも発生することがあります。

QRS波の形で判断しますが、基本は正常の脈と同じ形です。

  • 100拍/日以下:正常範囲であり、通常治療不要です 
  • 100拍/日以上:器質的心疾患のない場合でも新規心房細動発症の予測因子となることが報告されています 
  • 1,000拍/日以上:潜因性脳梗塞(ESUS)の既往がある患者では、その後の長時間心電図モニターで約40%に新規心房細動が発見されたとの報告があります 

頻度評価と基礎疾患の検索


ホルター心電図という24時間計測できる心電図計をつけて生活してもらい、どのくらい不整脈が出ているかを評価します。

上室期外収縮は健常人の9割以上に認められ、多くは100拍/日以下で、この程度までは正常範囲です。

カフェイン、アルコール、ストレス、疲労などの生活習慣によって頻度が増しやすくなります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心臓弁膜症、心筋症などの基礎疾患があると頻度が増えます。

頻度が多いようであれば基礎疾患の精査をすることも重要です 。

生活指導

上室性期外収縮が生活の質(QOL)を損なう場合には、カフェインやアルコールの摂取を制限することが推奨されます。

カフェイン、アルコール、ストレス、疲労などが上室期外収縮を増加させるため、これらの影響についても伝えていきます。

治療介入の判断


症状や血圧が下がるなどの影響は少なく、治療対象となることはまれです。

症候性の上室性期外収縮に対しては、β遮断薬の使用を考慮します。

特に日中に増加するタイプでは、β遮断薬の有効性が期待できます。

無症候性の上室期外収縮患者に対する抗不整脈薬の使用は、有効性がそれほど確立されていないため、基本は使用しません。

さらに心筋梗塞や心機能低下を合併する患者にI群抗不整脈薬を使用すると、予後を悪化させる可能性があるためこの場合は使用しません。 

心室性期外収縮

QRS波の形が、正常の脈に出るQRS波と異なる形をしています。主に幅広いQRS波になっています。

頻度評価と基礎疾患の検索

頻度は同様にホルター心電図で確認します。

  • 1日1万拍以上または総心拍数の10%以上心機能が低下する(心室期外収縮誘発性心筋症)ことがあるため注意が必要です  
  • 24%以上心室期外収縮誘発性心筋症の発生リスクが高くなると報告されています

2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドラインでは、ラウン分類として、頻度が1時間に30個以上、多形性、3連発以上、R on T型、連結期が短いものはリスクが高いとされています。

心室性期外収縮では、心エコーなどを用いて左室駆出率(LVEF)を測定し、心機能を評価することもおすすめされています。

心臓MRIは、特発性と考えられる場合でも潜在的な器質的心疾患の検索として考慮することがあります。

生活指導

心室性期外収縮でも、生活習慣(カフェイン、アルコール、ストレス、疲労など)の改善や軽い精神安定剤のみで経過観察することが多いです 。

治療介入の判断

器質的心疾患を伴わない特発性心室期外収縮は、一般的に生命予後は良好です。自覚症状が軽微な場合は治療を不要です。

強い症状や心機能低下を認める場合、または心室細動などの致死性不整脈の引き金となる場合には、薬物治療やカテーテルアブレーションによる治療を考慮します。

専門医紹介の基準

以下の場合には専門医への紹介を考えます。

  • 症状が強い場合(動悸、失神、めまいなど) 
  • 基礎心疾患が疑われる場合 
  • 心室期外収縮が1日1万拍以上または総心拍数の10%以上の場合 
  • 非持続性心室頻拍(3連発以上)を認める場合 
  • 運動負荷で心室期外収縮が増加する場合 

フォローアップには?

無症候性の場合
上室性期外収縮は基本的には経過観察となります。

症状がなく心機能が低下していない特発性心室性期外収縮の患者では、ただちに治療は行わず、定期的な心電図検査や心臓超音波検査で心機能評価を行い、経過観察していきます。

心室性期外収縮の頻度(バーデン)、非持続性心室頻拍の有無、器質的心疾患の有無などを中心に評価をしていきます。

症候性の場合
経過中に動悸などの症状が増悪したり、心機能の低下を伴う場合には、薬物治療やカテーテルアブレーションが検討されます。

心室性期外収縮の出現率には日内・日差変動があるため、正確な評価には1週間以上の長時間モニタリングが重要とされています。

期外収縮における臨床上の注意点・まとめ

上室期外収縮は一般に予後良好とされますが、将来の心房細動発症との関連が注目されています。

特に潜因性脳梗塞の既往がある患者では潜在的な心房細動のマーカーとして重要視されます 。

心室期外収縮の臨床的意義は、基礎となる器質的心疾患の有無や心機能の程度によって大きく異なります 。

頻発する心室期外収縮は、不整脈誘発性心筋症による可逆的な心機能低下を引き起こすことがあるため、定期的な心機能評価が重要です。

健診の心電図の中で期外収縮が一拍出ているからといって、1日で期外収縮がどのくらい出ているかの予測は難しいとされています。

症状がなければ、慌てる必要性はないでしょう。

ただ、数年にわたり指摘があったりするようなら、一度はホルター心電図で1日の期外収縮の総回数を確認してみてもよさそうです。

次回は「脚ブロック」と「軸偏位」について解説していきます。



情報源・エビデンス

  • 日本循環器学会:循環器疾患診療に関するガイドライン
  • 日本人間ドック学会:判定判定区分および事後指導判定基準
  • 厚生労働省:特定健康診査・特定保健指導の実施に関する手引き

関連記事:健診でよく指摘される項目について解説しています。

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