内科医師が解説する尿検査でわかること:第3回 尿検査でほかにわかることは?

医療

尿検査は、痛みもなく「腎臓・糖尿病・尿路の異常」を早期発見できる、最もコストパフォーマンスの高い検査の一つです。

過去2回は尿蛋白と尿潜血について解説しました。今回はそれ以外に何がわかるかを解説していきます。

今回は健診というよりも、病院で行う尿検査の結果で一般的に測定されている項目について解説します。

糖尿病、肝機能、感染症のサインを見逃さないための重要な項目が実はそろっています。

他の検査も合わせて結果を解釈するのが大事ですが、尿検査で一つのきっかけを得ることができるかもしれません。

尿蛋白、尿潜血以外で測定されるもの

健診では測定されないこともありますが、一般的に病院で尿検査をする場合は、以下の項目が測定されています。

  1. 糖・ケトン体: エネルギー代謝と糖尿病の指標
  2. ビリルビン・ウロビリノーゲン: 肝臓と胆のうの健康状態を推測
  3. 亜硝酸塩・白血球: 尿路の細菌感染リスク
  4. 尿pH:尿の中の細菌による尿素分解からアンモニアが作られるとアルカリ性になる
  5. 尿比重:脱水や利尿剤の影響で濃くなったり、薄くなったりする
  6. 円柱(尿沈渣で確認):腎臓由来の構造物、尿細管を鋳型としてたんぱく質が固まったもの。硝子円柱、顆粒円柱、赤血球円柱などがある

尿糖(糖)と尿ケトン体

エネルギーの燃えカスや、使いきれなかったエネルギー源をチェックしています。

主に糖代謝や脂肪代謝の異常をあらわします。

尿糖は、血糖値が腎臓の再吸収閾値(通常160-180mg/dL)を超えた場合に検出されます。

今は薬の影響で、血糖値が低くても検出することもあります

尿ケトン体は、糖質不足などで体が脂肪を分解しケトン体を過剰生成したときに検出されます。

過度なダイエット、インスリン不足の重度糖尿病、激しい運動などがあると検出されやすくなります。

項目陽性時の状態想定される主な病気
尿糖血液中の糖が溢れ出ている糖尿病、甲状腺機能亢進症、腎性糖尿
ケトン体脂肪がエネルギーとして分解されている糖尿病性ケトアシドーシス、飢餓、激しい運動
  • ポイント: ダイエット中や体調不良で食事が摂れないときも、ケトン体は陽性になります。

尿ビリルビンと尿ウロビリノーゲン

肝臓から十二指腸へ流れる「胆汁」の成分をチェックします。

ビリルビンは赤血球の分解された成分からできています(非抱合型ビリルビン=間接型ビリルビン)。

この成分が肝臓に運ばれると、肝細胞で抱合型(直接型)ビリルビンに変化します。

この抱合型ビリルビンが胆汁に排泄され、腸管に流れていきます。

腸内細菌によってウロビリノーゲンに変化し、9割弱は便で排泄・1割強は腸肝循環で再吸収され、肝臓に戻ります。

このため、血中に戻ったウロビリノーゲンは少量なら正常の人でも尿中に排泄されます

血液の中に含まれるビリルビンは通常なら尿中に直接排泄はしません。

しかし、肝細胞から胆汁に排泄できないほど肝臓にダメージがあったり、腸管に胆汁が排出できず(閉塞性黄疸)、肝臓に逆流→血液内にビリルビンがたくさん流入してしまうとき、尿中にビリルビンが検出されます。

尿中にビリルビンが陽性であれば、胆汁の流れに不具合が出ているということになります。

ビリルビン尿が多量に出ているときは、ウロビリノーゲンは逆に検出されなくなります。

項目陽性・異常時の状態想定される主な病気
ビリルビン本来、尿に出ない成分が漏れ出している肝炎、肝硬変、胆石、胆管がん
ウロビリノーゲン陽性が強すぎる、または全く出ない肝機能障害、溶血性貧血(強陽性)、胆管閉塞(消失)
  • ポイント: 尿の色が濃い「紅茶色」に見えるときは、これらの異常が隠れていることがあります。

亜硝酸塩と尿中白血球

尿の通り道(腎臓〜尿道)に細菌が侵入していないかを確認します。

尿の中に細菌が入っている場合は、それに反応して白血球(WBC)も尿中に多く検出されます。

食事から摂取した硝酸塩は普段から体内で吸収・排泄され、尿中に存在しています。

尿中に大腸菌などの硝酸還元酵素を持つグラム陰性桿菌(肺炎クラミジアやプロテウス属、腸内細菌属)が繁殖すると、硝酸塩を亜硝酸塩に変換します。

緑膿菌などの非発酵性菌では通常検出されません

尿中に亜硝酸塩があるということは、大腸菌などの細菌が関与している疑いが強くなるということになります。

項目陽性時の状態想定される主な病気
亜硝酸塩細菌が尿中の成分を変化させている膀胱炎、腎盂腎炎
白血球体が細菌と戦っている(炎症がある)尿路感染症、尿道炎
  • ポイント: 痛みがない「無症候性細菌尿」の発見にも繋がります。

比重とpH(ペーハー)

尿の濃さと、酸性・アルカリ性の傾きを調べます。

  • 比重: 水分摂取量や腎臓の「尿を濃縮する力」を見ます。
    • 高い: 脱水、糖尿病
    • 低い: 尿崩症、慢性腎不全
  • pH: 食事や代謝の影響を受けます。
    • 酸性: 高タンパク食、糖尿病
    • アルカリ性: 植物性食品の過剰摂取、尿路感染症

尿の比重は、体内の水分量の推定に使用します。

pHは酸性に傾きすぎると、尿管結石ができやすかったりします。

一方アルカリ性では尿路感染の疑いや尿バルーンが紫色になりやすくなったりします。

豆知識:尿バルーンを留置しているときに、尿が紫色に!

尿バルーンが紫色になるのを「紫色尿袋症候群」といいます。

食事由来のトリプトファン腸内細菌と肝臓でインジカンという物質になり、尿中に排泄されます。

このインジカンが尿中の特定の細菌(大腸菌、緑膿菌、モルガネラなど)の酵素によりインドキシルに分解され、青と赤色の色素を生成することで、紫色にバルーンの袋が変色します。

アルカリ尿+便秘+寝たきりの状態があると発生しやすくなります。

尿路感染の症状がなければ、カテーテル交換、便秘改善、水分摂取などで対応します。

尿沈渣:円柱とは?

尿円柱とは、尿沈渣で顕微鏡で直接観察できる腎臓由来の構造物のことです。

尿細管を鋳型としてたんぱく質がゲル化・凝固してつくられます。

腎実質の異常を示す所見であり、検出した種類によって病態を鑑別する手掛かりになります。

  • 硝子円柱:無色透明・無構造の糖タンパク気質→正常でも少量あり、脱水やストレスだけでも見られる
  • 顆粒円柱:顆粒を含む不透明褐色のもの→急性尿細管壊死や脱水を示唆する
  • 赤血球円柱:赤血球を含む赤橙色→糸球体腎炎(出血源)を示唆
  • 白血球円柱:白血球を含む→腎盂腎炎や尿細管間質炎を示唆=尿路感染症
  • 蠟様円柱:蠟のように屈折率が高く幅広い構造→慢性腎臓病の進行を示す
  • 脂肪円柱:脂肪滴や卵円形脂肪体を含む→ネフローゼ症候群や尿細管間質性疾患の時に検出
  • 上皮細胞円柱:尿細管上皮細胞を含む→急性尿細管壊死や糸球体腎炎

正常では硝子円柱は出ても許容できますが、他の円柱は基本出てきません。

尿路感染症があるときは、白血球円柱や顆粒円柱・上皮細胞円柱は出る可能性がありますが、他は出てきません。

赤血球円柱が出ているようなら、腎疾患の可能性が高くなるため、腎臓内科での腎生検を含めた検査を考えることになるでしょう。

まとめ

尿蛋白、尿潜血以外でわかる尿検査について解説しました。

尿沈渣で時々見られる円柱についても解説しました。

これらの結果だけで、診断を決定づけるものはありませんが、腎臓以外の機能に間接的に関与しています。

尿検査の結果を一つのきっかけにして、他の病気の可能性を考えることになるかもしれません。

実は様々なことがわかる尿検査、皆さんも健診や生活習慣病で通院中でも、尿検査を1年に1回は受けてみてもいいかもしれません。


情報源(一次情報・公的統計)

  • 一般社団法人 日本臨床検査医学会「臨床検査のガイドライン」
  • 厚生労働省「e-ヘルスネット:尿検査」
  • 日本腎臓学会「CKD診療ガイド」

関連記事:尿検査にもかかわる生活習慣病は、こちらもご覧ください

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