腹部レントゲンでわかること

医療

皆さんが健康診断で受けることが多いのは胸部レントゲン検査です。レントゲンは体の各部にあてることができますが、腹部レントゲン検査を健康診断でやったことはありますか?おそらく、誰もいないと思います。

胸部レントゲンは肺の全体像と心臓の大きさなどから、比較的得られる情報も多く生活習慣病とも密接にかかわるため、健康診断でも採用されています。

一方腹部レントゲンは、無症状でとることはほぼなく何らかの腹部症状(下痢、嘔吐、腹痛)があるときに確認するされることが多いはずです。ただそれでもかなり情報量は限られているのが実情です。今回は腹部レントゲンでわかることを解説したいと思います。

腹部レントゲンのうつるもの

レントゲンは体にX線を当てて、そのX線がどのくらい体を通りやすいかで色合いが変わり、現像されます。

  • X線がよく通る=フィルムや検出器にたくさん届く→黒く映る
  • X線が通りにくい=フィルムや検出器に届かない→白く映る
  • 黒く映る:空気が代表
  • 白く映る:骨、人工物(金属)、造影剤(バリウムなど)が代表
  • 筋肉や脂肪分など:少しX線を吸収するのでその場所の成分によって、濃淡がつく

おなかの場合

  • 骨・バリウムなどの飲んだ造影剤がある、大きな硬い石(胆石など)=
  • 胃、腸の中の空気
  • 肝臓や腎臓、筋肉、脂肪など=濃淡のあるグレー

これらが一枚の写真の中にうつっていることになります。

腹部レントゲンの写真からわかること

白くうつるものから

特に造影剤を飲んでいないと仮定すると、白くなっているのは骨です。背骨と骨盤になります。腹部症状とは大きくは関係ない部位です。石に関しては、痛みと石のある場所が同じならその痛みの原因である可能性が高くなりますが、レントゲンでうつる石はおそらく1㎝以上ないと判断難しいと思います。

異物を飲み込んだ(入れ歯などの金属などで)場合は、その異物の現在の場所が推定できます。

よって、白い部分が直接診断につながることは「異物を飲み込んだとき」となります。バリウムなどの造影剤を使ってのレントゲンはまた別の意味があります。(健診でも行う場合あり)。別記事:バリウムと胃カメラで解説していますのでよろしければみてください。

黒くうつるものから

空気の分布から判断します。基本的に腹部のレントゲンの中で腸管以外の場所に空気はありません。腸管以外の場所に空気のたまりがある=腸管に大きな穴が開いている、となるので緊急事態になります。小さい穴の場合、漏れる空気が少ないとグレーの部位に混ざって存在し、腸管のガスとの差がわからない場合もあります。

腸の中に異常に空気が多い:腸管の中で胃や大腸の中は正常でも空気がたまりやすいことはありますが、小腸の中は消化液と食べたものでいっぱいになっているのが正常(空気がない)なので、小腸に空気がたまっている→腸の流れが悪くなっている=腸閉塞の疑いとなります。こちらも、少なくとも飲食ができなくなるので、病院受診→入院となりやすい状態です。

グレーの部分に点状の黒いものが混ざっている:主に大腸に多く、便の中の空気がそのように見えることがあります。便秘だとわかりやすいことが多いです。

濃淡のあるグレーにうつるものから

腹部内にある臓器、脂肪、筋肉の状態ですが、細かいところで参考にすることはあるのですが、ここから、大きな病気がすぐにわかるということは稀です。グレーが全体的に均一に存在する場合=同じ成分のものがおなか全体に分布している→腹水がたまっている、ということぐらいならば、比較的見つかりやすい異常になります。

一部の細かい異常の場合は、判断に悩むことが多いです。そのため別の検査(腹部超音波検査やCT検査)を追加していくことになります。

まとめ:腹部レントゲンでわかる病気

  • 大きな腸管穿孔
  • 腸閉塞
  • 便秘症
  • 異物の存在(ある場合)
  • 腹水貯留(よく見ればわかるかもぐらいのこともある)

腹部レントゲンだけでわかることはかなり限られています。胃腸炎の診断は残念ながらレントゲンでは断定できません。

良い面としては、腹部症状があって、腹部レントゲンを行って判断できる病気の大きな腸管穿孔(腸に大きな穴が開いている=緊急事態)、腸閉塞(腸が詰まながれない=入院適応)の2つだった場合はその日のうちに大きな病院での精密検査+治療につながります。

異物の存在(金属物の誤飲など)では場所がわかれば、内視鏡で取り出せる可能性もあります。

しかし、腹部症状を要する危険な病気はまだたくさんあり、それらを判断するにはレントゲンだけでは不可能です。そのため、腹部超音波検査や腹部CT検査も併用して判断されていることが多くなります。

腹部症状の病気は、まず症状の強さがポイントです。強い症状の場合は腹部レントゲンでわかる2つの病気の場合のみ判断可能になりますが、やはりそれだけ強い症状なら他の病気の可能性も残るため、大きな病院での検査が望ましいでしょう。

レントゲンで正常でも過信せず、症状が続くようなら、精密検査を考えるようにしましょう。

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