秋になると役所から胃がん検診の案内が届く方もいると思います。地域によってバリウム検査か胃カメラのどちらか、もしくは両方選択できるところもあるかもしれません。
胃がんを見つけるにはどっちがいいの?と疑問を持つ方も多いと思います。胃がんを見つけることに関しては、胃カメラがおすすめです。
その理由について、またこの二つの検査の利点・欠点をまとめて解説していきます。
バリウム検査(上部消化管造影検査)
バリウムの利点は
- うまく写真を撮れる条件を整えれば、だれがとっても同じような撮影ができる
- 胃全体の形や変形を見ることができる。胃が固くなるようなスキルス胃がんは検出しやすい
- 体位をいくつか変えながらレントゲン撮影をするため、我慢する時間が短い
- 異物が直接入るわけではないので、苦痛自体は少なめ。
- 医師がいなくても、検査ができる。
- レントゲンの機械だけで対応できるため、スペースやコストが少なく済む
一方で欠点は
- できた写真を判断する医師の負担と精度の確保
- 小さな胃がんを見つけるのが困難
- 放射線被ばくをゼロにはできない
- うまく写真を撮るのが難しいときもある。
- 飲んだバリウムを排泄するため、下剤を使用。バリウムが出ないような病気が他にあった場合はその対応が必要になる場合あり。
- 胃を膨らますために使用する発泡剤による腹満感、嘔気
胃の形が変化するような大きな胃がんは検出しやすいものの、小さな胃がんはレントゲンではわからないことも多いのが現状。また、普段の診療で使うのが胃カメラになってきており、バリウム造影を判断できる医師も減ってきているのが現状です。
苦痛は少ないとはいえ、バリウムを出さないといけないことや、げっぷを我慢する腹満感など、多少の苦痛は避けられないところもあります。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)
胃カメラの利点は
- 小さな胃がんも見つけられる
- 検査中、検査後の処置がすぐに対応できる
- 鎮静剤を使えば、苦痛も感じないまま検査できる
- 放射線の被ばくがない
欠点は
- 1人当たりの検査にかかる時間は、のどの麻酔・鎮静剤使用から回復まで考えると1時間以上かかる。(内視鏡を入れている時間は5-10分程度)
- 鎮静剤なしの場合、のどの違和感や検査中の異物感、腹満感などが感じやすい
- 鎮静剤ありの場合、薬による副作用や体調への負荷がある
- 設備・人的コストがかかる。検査する場に必ず医師が必要
鎮静をしないところならば、1人当たりの検査にかかる時間は30分程度に短縮できそうですが、鎮静を希望する人の方が多いため、検査にあたっての時間と設備、人的コストは大きくなります。ただ、検査の目的を考えるなら、胃カメラの方がバリウムよりも早期発見、死亡率低下、がんの検出率と勝っているところが多く報告されています。
よって、両方できる環境で選べるなら、苦痛をどこまで考えるかによりますが 胃カメラ を選ぶべきでしょう。
胃カメラとバリウム:今後の胃がん検診はどうなっていく?
以前は内視鏡もまだ未発展でバリウムしか選択がない状況のため、公的機関からの検診案内ではバリウムによる胃がん検診でした。
2016年に対策型胃がん検診で胃カメラも選択できるようになり、今後選択できるところが増えてくるようになります。
ただ胃カメラを一定年齢になったら全員に行うのは、設備・人的・時間的にコストが大きすぎて、なかなか難しいのが現状です。そこでまず第一段階として、胃がんのリスクになるピロリ菌がいるかどうかの確認を血液検査で行うことができます。
ピロリ菌がいる、もしくは疑わしい人だけを内視鏡検査に回すことで、より精度を上げて胃がんを拾い上げることができるのではないかといわれています。
ピロリ菌チェックの血液検査は症状がない状態では保険適応にならないので、もし一般の診療目的に病院で希望するなら自費診療か胃カメラをやる前提で検査も行う といった方法になります。
人間ドックに組み込まれていることもあるので、もし組み込まれていた、まず受けてみることもお勧めです。
まとめ
胃がん検診を受けるなら、胃カメラが望ましい。胃カメラがつらそうなどあれば、ピロリ菌チェック。ピロリ菌が疑わしい場合は、胃カメラやバリウムで追加検査。ただし、検査の特徴を踏まえて選択 が良いと思います。
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