「体調が悪いけれど、どこに行けばいいんだろう?」
「とりあえず大きい病院に行っておけば、詳しく検査してもらえるから安心だよね」
そう思って、朝一番に総合病院にいった経験はありませんか?
確かに、大きな建物に最新の設備、たくさんの専門医がいる総合病院は、いかにも「すべてを解決してくれそう」な安心感があります。
しかし、現在の日本の医療制度において、「何でもかんでも最初から総合病院」というのは、実は患者さんにとって必ずしもベストな選択ではないことをご存知でしょうか。
この記事では、現役の医療現場の視点から、総合病院とクリニック(診療所)、さらにその中間にある小・中規模病院のそれぞれのメリット・デメリットを徹底解説します。
自分や家族の健康を守るために、「賢い病院の選び方」を身につけましょう。

そもそも「総合病院」と「クリニック」の違いは何?
医療法などで定義はいろいろありますが、ざっくり分けると以下のようになります。
- クリニック(診療所): 入院施設がない、またはベッド数が19床以下の施設をさします。いわゆる「街のお医者さん」や「〇〇内科クリニック」といったものです。
- 総合病院(大病院): ベッド数が200床以上あり、多くの診療科を備えている施設。特に400床を超えるような病院は「特定機能病院」や「地域医療支援病院」に指定されていることが多いです。
現在の日本の医療は、「役割分担(医療機能の分化)」を国を挙げて進めています。
「風邪や生活習慣病は近くのクリニック(かかりつけ医)で」、「高度な手術や救急対応は総合病院で」という役割分担です。
この両方をある程度こなせるような小・中規模病院(50~200床未満の入院ベッド数)もあります。
それぞれの病院・クリニックで得意とする領域が違うので、もう少し詳しく見ていきます。

総合病院(大病院)のメリット・デメリット
メリット:高度な医療と病気の治療が完遂できる「安心感」の源泉
- 検査・治療機器が充実しているMRI、CT、PET-CTなどの高価な診断機器や、最新の手術支援ロボットなどが揃っています。精密検査が必要な場合でもその病院内ですべて完結できるのが最大の強みです。
- 専門医の数が多く、複数の医師がいるチーム医療が受けられます。例えば「がん」の治療であれば、外科医だけでなく、放射線科医、化学療法専門の医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などがチームを組んでサポートしてくれます。
- 救急対応や入院設備が整っている万が一、急激に容態が悪化した際にも、24時間体制で対応可能な体制が整っています。
デメリット:意外と知らない「時間」と「お金」のコスト 安定した後も継続して通院できるとは限らない
- 待ち時間が非常に長くなることが多いです。「3時間待ちの3分診療」という言葉がある通り、予約をしていても数時間待つことも珍しくありません。
- 「紹介状」がないと追加料金(選定療養費)がかかります。紹介状なしで200床以上の大病院を受診すると、診察代とは別に7,000円〜10,000円程度(歯科は5,000円程度)の追加費用がかかることが大半です。これは、軽症の患者さんが大病院に集中するのを防ぐ目的も含まれた制度になっています。
- 担当医が頻繁に変わる可能性があります。総合病院の医師は数年で異動することが一般的です。また外来担当日も固定されており、状況によっては違う医師が担当したり、診察日が限られたりすることがあります。
- 治療のための入院が終わったら、体力回復まで入院を継続することは難しいです。もし、まだ体力低下などで退院が難しいという状況なら、転院を案内されます。
- 治療が終了し、ある程度の安定を得られたら、通院も終了となります。以降は近医のクリニックなどで継続投薬などの目的に紹介されます(逆紹介)。
クリニック(かかりつけ医)のメリット・デメリット
メリット:あなたの「健康の窓口」としての強み
- 待ち時間が少なく、ある程度融通の利く通院システムを導入しているところが多いです。初診患者でも予約が取りやすく、総合病院に比べれば圧倒的にスムーズに受診できます。専門以外の症状でもとりあえず診療してくれるところが多く、「まず行くべき医療機関」として頼りになります。仕事や育児で忙しい方にも大きなメリットです。
- 医師との継続的な信頼関係が築ける「いつもの先生」に、持病だけでなく家族構成や生活習慣まで理解してもらうことで、ちょっとした体調の変化などにも気づいてもらいやすくなります。
- 医療費が安く抑えられる前述の追加費用がかからないだけでなく、再診料や処方料なども総合病院より低く設定されている場合があります。
デメリット:設備と専門性の限界
- 高度な検査や手術ができないMRIなどの大型機器は置いていないことが多く、精密検査が必要な場合は他院へ行く必要があります。
- 夜間や休日の対応が難しい多くのクリニックは夜間や日曜・祝日は休診です。
- 対応する医師が少ないため、良くも悪くも、その個人の医師の知識・技量次第で結果が大きく変わる場合もあります。
中・小規模病院のメリット・デメリット
メリット:クリニックより対応できる状況が多く、大病院より小回りが利く
- クリニックより検査ができる機器が多く、入院できる施設もあるため、幅広く対応が可能です。
- 入院期間もある程度の融通が利くので、治療終了後も体力低下の回復まで継続的に見てくれることが多いです。
- 医師は一人だけだが、看護師・リハビリ・医療相談員などのチーム医療が可能であり、在宅生活に戻った後の対応も個人の状況に応じて考えてくれます。
- 休日・夜間も、通院しているかかりつけの患者さんなら対応してくれる可能性が高く、緊急入院も比較的させてくれやすいことが多いです。
デメリット:すべての病気をその場所で完遂はできない 医師の技量差が目立ちやすい
- ある程度検査が可能であるがゆえに、何とか自分の病院だけで完結しようとする傾向があります。結果的に少し検査・治療が遅くなってしまったケースもあります。
- 医師の人数が少ないため、基本の方針は一人の医師が中心になってきめます。そのため、その医師の個人技量によって差が出やすいです。他院を頼るということをやりたがらない医師もいます。
- 救急対応もすべての病気・症状で対応するのは難しいです。その病院でできない処置が必要と考えられる場合は、対応不能とせざるを得ないこともあります。

賢い使い分け:理想的なステップは「1→2」
結論から言うと、体調が悪い時にまず行くべきは「クリニック(かかりつけ医)」です。
なぜなら、クリニックの医師は「ゲートキーパー(門番)」の役割を果たしているからです。あなたの症状を見て、
「これは当院で薬を出して様子を見ましょう」
「これは精密検査が必要だから、あそこの総合病院の〇〇先生に紹介状を書きますね」
という判断をしてくれます。
この「紹介状」を持って総合病院に行くことには、以下の大きなメリットがあります:
- 追加費用(7,000円以上)がかからない。
- クリニックでの検査結果を持参するため、検査の重複が防げる(時間とお金の節約)。
- 総合病院側も、事前情報があるためスムーズに専門の部署へ案内できる。
すごく具合が悪いわけでもないけど、飲み物も飲めず、ぐったりして動けなくなっているというような状態ならば、
小・中規模病院が近くにあれば、そちらを受診したほうがスムーズかもしれません。
「入院対応が必要な状況」とクリニックの医師が判断したら、その場所の状況に応じて、総合病院や入院が可能な小・中規模病院へ紹介してくれます。
【チェックリスト】こんな時はどっちに行くべき?
状況に応じて、どちらを優先すべきかの目安をまとめました。
| 状況 | 推奨される行き先 | 理由 |
| いつもの薬が欲しい、風邪気味 | クリニック | 待ち時間が少なく、感染リスクも抑えられる。 |
| 健康診断で「要精密検査」と言われた | クリニック(まずは相談) | どの検査をどこで受けるべきか、専門家のアドバイスをもらう。 |
| 夜中に突然の激痛、意識混濁 | 総合病院(救急車) | 一刻を争うため、24時間体制の病院へ。 |
| 長年、原因不明の体調不良が続く | クリニック → 総合病院 | まずはかかりつけ医に相談し、適切な科を紹介してもらう。 |
| 専門的な手術や抗がん剤治療が必要 | 総合病院 | 設備と専門チームの力が必要な領域。 |
まとめ:「安心」は病院の大きさではなく「連携」にある
「大きい病院なら安心」というのは、あながち間違いではありません。しかし、それは「適切なタイミングで、適切な理由を持って受診した場合」に限られます。
現在の医療で最も安心なのは、「何でも相談できる近所の先生(クリニック)」と「高度な治療をしてくれる大きな病院(総合病院)」が、あなたの情報を共有して連携している状態です。
これを「病診連携(びょうしんれんけい)」と呼びます。まずは身近なクリニックで信頼できる先生を見つけ、そこを入り口に必要に応じて大きな病院の力を借りる。これが、現代の日本で最も賢く、そして安全に医療を受けるための正解です。
小・中規模病院が近くにあって、身近なことまで親身に対応してくれるようであれば、そちらを第一にしてもいいかもしれません。
病院によって特色が異なるので、どのクリニック・病院が一番頼りになるのか、この記事の内容も踏まえて、考えていきましょう。
「病院選びに迷っている」という方は、まずは近所の内科や整形外科など、評判の良いクリニックを探すことから始めてみてはいかがでしょうか?


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