現在、日本の医師の大多数は大学卒業+国家試験合格して医師免許を取得したあと、
初期臨床研修として、決められた病院(自分の希望+研修先の病院の希望が合致した病院)で2年間は様々な専門科をローテーションして勉強していきます。
医師になる前から専門科を決めている人もいますが、多くはこの研修期間中に専門とする診療科をなんとなく考えていき、後期研修などに進みます。
今回、自分の経験談もあわせて解説していきたいと思います。
実際にどのようなポイントがあるのか、医学生や初期研修医の人にも一つの参考材料になれば幸いです。

前提:自分の背景を紹介
まずはじめに、自分の背景を紹介します。
自分の家系や両親は医療系の仕事ではありませんでした。そのため、病院や診療所の後を継ぐというような制約はありませんでした。
一般的な公立中学→公立高校を卒業し、医学部に運もあって合格できたという、あまり面白みもない経歴です。
大病を経験したということもなく、医学部時代に専門科を決定づけるような大きなイベントもありませんでした。
特に専門科を決めるような大きなきっかけはない状態だったということです。
医学部時代には漠然と内科全体を診ていきたいという願望はありました。
外科系は、自分の性格・体力的に合わない、マイナー系(眼科や耳鼻科など)は専門に偏ってしまうかなと思ってました。
卒業試験や国家試験で、せっかくすべてのジャンルを勉強したので、なるべく長く知識を使っていきたいと思っていたので、とりあえず内科系で考えていました。
さらに内科の中で専門科を決めるのは実際に働いてみてからと思っていました。
専門科を決めるのに:まずは3択 内科系? 外科系? それ以外?
医学生・初期研修のうちにまずざっくりと、この3択から選ぶことが多いでしょう。
その中で、さらに細かく選択していくことになります。
以下に挙げる要因を考慮して、決定していきます。
専門科を決める判断材料

手技が好きかどうか
診療科の性質を決定づける因子の一つは、自分でできる(できるようになる)手技がどのくらいあるかです。
外科系(消化器外科、心臓血管外科、整形外科、泌尿器科や耳鼻咽喉科など)は手術によって成り立つ診療科であるから、手技をとにかくやるという人向けです。
内科では、循環器内科が心臓カテーテル検査、消化器内科は消化管内視鏡、呼吸器内科は気管支鏡といった手技があります。
その他の内科(神経内科や腎臓内科、糖尿病内科など)はそこまで中心となるような手技はありません。
ただ、より頭で考えて判断するということが増えてきます。
それ以外の科である産婦人科、眼科、形成外科、皮膚科は手術や処置があるので、手技はそれなりにあります。
小児科は、むしろ手技が少ない診療科ともいえそうです(子供の全領域を診る)。
ただ専門特化している病院では、内科と同様に治療手技を行うところもあります。
手技が少ない診療科の代表格は精神科です。全くないといっていいかもしれません。
放射線科については、画像診断だけであれば当然手技はありません。
治療放射線科として稼働しているところは、IVRという放射線画像を見ながらカテーテル検査・治療を担っているところもあります。
損得を考えるのであれば、手技は少なければ少ないほど損が減り、働くうえでは安全になります。
とはいえ、世の中の医者のイメージの理想像は、おおむね外科医です。
やりがいなど求めて手技の多い科にするかどうかは、個人の考えと性質によってかわってくるでしょう。
個人戦か?チーム戦か?:どちらが好み
外科手術は、ほぼ医師一人だけではできないものです。
最低でも医師が2人以上必要であり、さらに看護師や検査技師など多くのサポートが必要です。
内科系の手技も、医師一人では難しい場合もあります。
また同様に看護師、検査技師のサポートがあってこその安全で確実な手技につながります。
自分一人でやる個人プレーが好きか、一つのことに向けてチームであたっていくのが好きか、どちらが向いているのかを考える必要があります。
大事なことは「コミュニケーション能力」です。
普通に一般常識レベルであれば問題はありません。
そもそも患者さんを診るためには、患者さんと「ちゃんと会話ができる」ことが重要です。
これが難しいと感じる人なら、むしろ研究者のほうが向いているかもしれません。
労働負荷
いわゆる「超多忙な科」 or 「どちらかというとゆったりした時間の流れる科」のどちらにするかという問題です。
医師は診療科ごとの労働量の格差がかなりあるものです。
過労死寸前の労働を強いられる診療科もあれば、定時帰宅かつ業務中も比較的ゆったりできる診療科もあります。
さらに労働負荷で差がつく項目は夜間当直です。
睡眠不足の耐性があるかどうかは、医師の適性を決定づける因子の一つです。
学生時代に勉強にしろ遊びにしろ、徹夜できていた人間は不眠不休の当直も耐えられそうですが、そうでない人間は難しいかもしれません。

その科はつぶしが効くか
その診療科を専門にして、今後どんな働き方ができるかを考えることで、よりつぶしがきく専門科を選択する場合もあります。
大きな病院で継続して努めていくのか、開業を目指すのか、それとも産業医やその他の道も考えるのかなど、
将来は別の働き方になる可能性もあります。
専門科によっては多くの選択枝が得られる場合もあるし、ほぼ一本道にせざるを得ない場合もあります。
内科系は、大病院での第一線での活躍から開業まで広くつぶしがきく可能性があります。
外科系でも、整形外科や耳鼻科などは開業で十分専門性を発揮していけるでしょう。
ただ大人数で手術をすることが多い心臓血管外科や消化器外科などは、大病院以外の仕事環境になると、
今までやってきたこと以外のほうが仕事割合として増えてしまうかもしれません。
自分の理想、希望、体力なども考えたうえで、その先を見据えて選択する人もいます。
給料面
医師の給料は、どの専門科も大きな差はなく、役職や年数などで一律に設定されていることが多いです。
多忙でも、暇でも基本的には給料の差がありません。費用対労働時間で考えると、多忙な診療科ほど損をする仕組みです。
どんなに頑張っても、賃金面で報われないとなると、、、
産婦人科や小児科に続き、現在外科医が減っているという話題につながります。
給与的には「都内で超多忙科の専攻医+大学院進学学位取得」のようなコースは医師最下層となってしまいます。
実はこのコースが医師の一番の王道パターンです。
現在このパターン以外が増えているのは、給与問題も切実になっているというところでしょう。
ライフイベント
専門科を決めた時期と結婚や子育てといったライフイベントが重なるパターンが少なくないと思います。
男性の場合はまだしも、女性は妊娠出産と医師のキャリアのどちらを優先するか、非常に難しい問題になります。
医師に限らず、日本のキャリアスケジュールは男性が参画することを想定しているので、女性が同じように振る舞うと支障が生じるようにできています。
女性医師は、特にライフイベントのことも考えて、選択する必要性がでてくるかもしれません。
専門科を決めない選択肢は?
どの診療科も選択せず、健診や脱毛問診などのアルバイトで食いつなぐいわゆる「ドロッポ医」と呼ばれるものです。
部活でいえば帰宅部あたりに該当するでしょうか。
診療に追われることはありませんが、そもそも定期的に仕事ができるかどうか不明確な状況になります。
自分で事業を起こすなど、能力次第では大成功するかもしれませんが、せっかく医師免許まで取るほど勉強したのに?という感じがします。
何かしら別の仕事をするにしても、医師としての本業と併用=副業として始めて行く方が安全でしょう。
「直美」(直接美容医師になるコース)について
最近話題の直接美容医療に進む進路です。
直美医師が増えているとネットニュースにもありましたが、実際はどうでしょうか。
初期研修医が半分「直美」になったという話は聞きましたが、全員が成功するかといったら、まず不可能でしょう。
もちろん、真面目に進路として美容医療を考えているなら直美で何ら問題はありません。
下手に皮膚科や形成外科に進むよりも教育体制がしっかり整った美容医療機関に就職するほうがよいこともあるかもしれないです。
しかし、「給与が高いから」、「保険診療は大変だから」など消極的な理由で選択するにはリスキーな進路でしょう。
今までの教育や研修が役に立たない別世界であり、その中で商売を成り立たせるには、また別の才能と努力が必要になるはずです。
トラブルにあうことも想定しなければなりません。
また、ダメだった場合に再度保険診療を使うような医療業界に戻れるかというと、本人次第でもありますが、かなりハードルは高くなると思います。
自分の場合は:

自分の場合は、幅広く見ることができることを第一にしていました。
離島診療などもできるように考えていたので、「医者は一人でも広く対応できる診療科」を探していました。
チーム戦でも個人戦でもどちらでも苦にはならないタイプでしたので、手技はあるほうがいいかなと思っていました。
体力的にはそこまで自信あるほうではなく、何人がかりの医師でわちゃわちゃやるのは、そこまで好きではありませんでした。
よって、外科系よりは内科系で、その中で手技がある科として考えました。
循環器の急な呼び出し・イベント対応頻回になるのが結局なじめず、手技の種類の豊富さから、消化器内科を選択するに至りました。
離島医療可能なぐらいの経験を得たかったので、後期研修も内科以外を中心に研修していました。その中で内科を研修するときに、内視鏡など携われるようにやっていました。
その後は消化器内科を主として対応していくようになりましたが、まだ内科一般・ある程度の専門外の状態も対応できるようにはしています。
幅広く見ることを前提にしていたため、いろいろな選択肢はできるようになりました。
給与面も都会の大病院以外の選択が多くなるため、そこまで低い給料ということもなく、
労働面も超多忙ということはありません。
まだ臨床医主体の働き方ですが、徐々に臨床医以外の仕事も考えるほどの気持ち・時間的なゆとりもでてきました。
まとめ

自分の時の場合も含めて、専門科を決めるときに考えることをまとめてみました。
大まかな方向は、なるべく早めに決めたほうがいいと思いますが、そのあとの細かいところは働きながら決めていけばいいのではないかと思います。
突然思い立って、大きく方向転換する人もいます。
それぞれの考え方などありますので、何が正解かは誰にもわかりません。
ただ目先のことばかりを考えて、未来の大きなリスクをとることはないようにした方がいいかな、とは思います。


コメント