5年前に新型コロナウイルスが流行し、自宅でも酸素の状況を知るためSpO2モニター(パルスオキシメーター)が一般にも普及してきました。もともとは医療機関で使われていたものですが、小型で簡便でもあり、在宅診療でもよく用いられています。
ただ、基本的な使い方は簡単ですが、数値の解釈にはいくつか気を付けないといけないところがあります。この記事で、注意点を確認しSpO2を最大限に有用化しましょう。
注意点:ポイントは呼吸数と手足の温度(冷え)
- 呼吸する回数が多い→呼吸機能が正常ならSpO2の数値が高くなる状態として考える必要がある
- 手足が冷たい(冷えていたり、皮膚の色が紫色に近い)→SpO2がうまく測定できない。その時の数値は、実際の状況と合わない場合がある。
なぜこうなるか、細かく見ていきましょう
SpO2(パルスオキシメーター)の原理
測定する場所に赤色光(約660nm)と赤外光(約940nm)の2種類の光を当て、透過した光量から血中のヘモグロビンの状態を分析します。酸素と結合したヘモグロビンは赤色光を多く透過し、酸素と結合していないヘモグロビンは赤色光を吸収しやすい特徴があり、その相対的な割合を数値化しています。
動脈内に流れる血液の拍動波形から、動脈血の成分のみを抽出して測定、短時間の平均値で安定させて、数値化しています。
SpO2=酸素と結合したヘモグロビン量/全体のヘモグロビン量 で表しています。動脈のみを検出するので、ほぼ酸素とくっついているヘモグロビン量なので、正常は95~99%となります。
測定時の注意
測定場所
あてる光が動脈に当たらないといけないため、なるべく表面から近い血管を選択します。また光が届きやすい場所の方がいいので、一番多いのが手足の爪になります(主に指先)。
測定器の種類によっては耳たぶや額から測定することもできます。
測定環境で数値の信頼性が変わる
光が爪にうまく当たらないといけないので、付け爪や厚いネイルがあるなどの、障害物で光が届かない場合はSpO2はうまく測定できません。
光がうまく当たっても、手足が冷たい状態(血流がうまく回らない状況)だと血流を感知できず、測定がうまくできません。本人の状態が悪いときは、うまく測定できない=相当具合が悪いと推定できることもあります。
呼吸する回数でも数値が変わる
皆さんは1分間の間で何回呼吸しているか気にしたことはありますか?正常な呼吸回数は成人で12~15回/分といわれています。この時の呼吸回数を基準として、SpO2の正常範囲も決められています。
100mを全力疾走した後は呼吸回数が増えてますよね。これは、運動して消費した酸素を早く回復しようと呼吸回数を増やしているためです。この時SpO2を測ると正常範囲なことが多いでしょう。
呼吸回数だけが増える病気の代表が、過呼吸発作(過換気症候群)です。不安などから呼吸回数が増える一方で肺などには病気がありません。そのため、血中の酸素はむしろ過剰になり、SpO2を測ると100%と表示されます。この時はミネラルバランスが一時的に崩れることから、手足のしびれなども出現します。落ち着いて、呼吸回数が戻ると、症状も改善します。
高い熱の時はどうでしょう。これも呼吸回数が増えます。そのため通常の時よりもSpO2は高い数値になりやすい状況になりますが、このときSpO2が94%と若干低く出た場合、何かしら肺の状況が悪いと推測できます。
逆に息を止めると、血中の酸素は徐々に消費されるのでSpO2も少しずつ低くなります。頑張れば、SpO2 90%ぐらいまで下げることができますが、かなり苦しいです。
呼吸回数が少なくなり、SpO2も低くなっている場合は、すでに体内で呼吸回数を増やせという指令もできない状態となるので、終末期の状況といっても差支えがありません。基本的に生命維持のためには、体内の酸素が足りない状況になると、呼吸回数を増やせという指令が出るためです。
まとめ
簡単にイメージすると
- はぁはぁしていて(呼吸数が多い)、手足は冷たくない(測定はできそう)、SpO2正常値~高い→呼吸機能はまだ大丈夫。少し余裕あるかも。
- はぁはぁしていて(呼吸数が多い)、手足は冷たくない(測定はできそう)、SpO2正常値より低め→呼吸機能の異常疑い、余裕がない可能性、危険かも。
- はぁはぁしていて(呼吸数が多い)、手足は冷たい(測定は?)、SpO2低い→危険な状態
- はぁはぁしてない(呼吸数は正常)手足は冷たい(測定が?)SpO2低め→本人の具合が悪そうでなければ、様子見ててもいいかもしれない
- はぁはぁしてない(呼吸数は正常)手足は冷たくない(測定はできている)SpO2低め→何かしらの呼吸機能の低下、ただ症状の切迫感はないので、日中の受診でよさそう
基本はSpO2が正常値より低いと異常ですが、例外もあることをわかっているとより有益に利用できるようになります。
測定器自体も、お手ごろな価格で手に入りやすくもなってきています。家庭用に一つあれば、何かあった時に判断する材料の一つになるのではないでしょうか。


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