頭痛 危険じゃなくても痛いものは痛い

医療

皆さんも頭痛を経験したことがあると思います。日本人の90%以上が一生に一度は頭痛を経験するといわれています。慢性的に月1回以上頭痛を経験する人も、近年増加傾向になっています。原因として命にかかわるものから、命にかかわらないものの痛みが持続しやすいものなど様々です。頭痛を経験しても約30%は病院に行かず、市販薬などで対応しているのが現状です。

細かい診断を下すには、ある程度の期間は経過観察をする必要があります。確実なのは頭痛を専門とする医師・病院に行った方がよいと思いますが、時々の投薬などで対応できる心配のない頭痛も多くあります。今回は、危険な頭痛の見分け方長く続くときに多い頭痛を中心に解説したいと思います。

頭痛の種類:一次性頭痛と二次性頭痛

頭痛で一番多いのは、実は二日酔いであり生涯の頭痛の種類の中で罹患率72%と言われています。その次が緊張型頭痛(69%)>発熱に伴う頭痛(63%)となります(日本内科学会雑誌2023年8月号より)。ここまでが大半です。

それ以下は空腹に伴う頭痛(19%)>副鼻腔疾患(15%)=片頭痛(15%)=アイスクリーム頭痛(15%)であり、脳血管障害や能実質の異常(脳腫瘍など)は1%程度にとどまります。

一次性頭痛:頭痛が症状の主体となっているもの

  • 片頭痛
  • 緊張型頭痛
  • 群発頭痛
  • 大後頭神経痛  など

二次性頭痛:ほかの病気が原因で頭痛が起きる

  • くも膜下出血
  • 髄膜炎
  • 脳出血
  • 脳動脈解離
  • 緑内障
  • 一酸化炭素中毒
  • 脳腫瘍    など

危険な頭痛:二次性頭痛の疑いがあれば、病院へ

主に生命にかかわる可能性のあるのは二次性頭痛になります。特徴として頭痛以外に確認すべきところがいくつかあります。

  1. 全身症状(発熱、だるさ、体重減少、筋肉痛)
  2. 全身性疾患(悪性腫瘍やエイズなど)
  3. 神経欠落症状:手足が動かしづらい、見えにくい、しゃべりにくい、しびれているなど
  4. 発症のタイミング突然の発症、雷鳴頭痛、急速に悪化している、痛くて目が覚める
  5. 年齢:40歳以上の新規発症(5歳未満も注意)
  6. 以前と比べる:いつもの頭痛とは違う頭痛(頻度、持続、性状、重症度など)

これらがある場合は、危険な頭痛の可能性があるので、頭部CT・MRIなどの画像検査を含めた対応が必要になります。救急搬送も考えたほうがいい場合も多いので、症状の度合いをみて判断しましょう。

そのほかに運動・性行為などのきっかけがあってからの急激な頭痛も危険な可能性があり注意です。

長くて痛い頭痛:一次性頭痛の代表 片頭痛と緊張型頭痛

代表的な2つの疾患を中心について触れます。

片頭痛

診断基準は「4-72時間(3日間)持続する頭痛」、「片側・拍動性日常生活を妨げる強さ動くと悪化する頭痛」のうち2つ以上ある、発作中に「嘔気・嘔吐、光過敏・音過敏」を1つ以上あることである。前兆があってもなくても、片頭痛の診断になります。

簡単にすると、

  • 日常動作を妨げるような頭痛
  • 嘔気
  • 羞明(まぶしさを強く感じる)

この3つがそろえば片頭痛の疑いが強くなると考えてよいと思います。

片頭痛の有病率は日本人全体で 8.4%(男性3.6%,女性12.9%)で女性に多いとされています。

治療には痛み止めをまず使用します。NSAID(ロキソニン、イブプロフェン)やアセトアミノフェン(カロナール)が選択されます。少ない量から増やすではなく、最初に最大量を投与したほうが効果的です。

痛みがひどい場合は、NSAIDよりも先にトリプタン製剤を使用したほうがいい場合が多いです。血管を収縮させる薬のため、状況により使用できないこともあります。

月3回以上の片頭痛発作が起きる場合は予防治療を検討することが推奨されています。あくまで頻度を減らすことが目的ですが、降圧薬(ロメリジン)、抗てんかん薬(バルプロ酸)、抗うつ薬(アミトリプチリン)を使い、2-3か月で判定します。無効な場合はCGRP関連抗体薬を検討します。

片頭痛の誘因として

  • 精神的因子:ストレス、精神的緊張、疲れ、睡眠不足・睡眠過多
  • 内因性因子:月経周期(エストロゲンの関与)
  • 環境因子:天候の変化、温度差、高山など
  • 食事:アルコール(特に赤ワイン) 人によってはチョコレートやチーズなども。

全部だめにするというわけでもなく、日常生活をなるべく乱さないようにすることが大事です。

緊張型頭痛

首や肩こり、姿勢の悪さや目の疲れなどから起こる頭痛で、日本人成人の約20-40%で最も多いタイプの頭痛とされています。

メカニズム的には片頭痛と同じ場所からと言われており、明確に片頭痛と区別すべきかどうかは議論があるところとされています。

症状の特徴は、頭が締め付けられる痛み、後頭部や両側が痛い、嘔気は少ない がありますが、特に決定づける症状はありません。

予防法はマッサージやストレッチなど行いつつ、生活リズムを整えることになります。痛みが強いときはNSAID内服をすることが多いです。薬の予防法は抗うつ薬や抗てんかん薬となりますが、保険適用外なのが現状です。

慢性的に続く場合もありますが、薬を飲んでも効果がなかったり、吐き気・めまいが出たり、いつもと違うタイプの痛み方などあるようなら、病院受診を考えましょう。

薬物乱用頭痛 群発頭痛

一次性頭痛であとあげられることが多いのが、この2つです。

薬物乱用頭痛は頭痛の1%程度であり、1か月に10日以上使用すると乱用になるのが、トリプタン製剤、エルゴタミン、市販の鎮痛剤などです。1か月に15日以上で乱用になるのが、アセトアミノフェンやNSAIDになります。治療は薬をやめることで7割が改善します。

群発頭痛は男に多いこと、1-2時間の短時間で片側の激烈な痛み(眼窩から側頭部中心)が起きるものです。治療薬も少し異なりますが、頻度は稀です。

まとめ

病院にまず行くべき状況は、二次性頭痛の否定です。一次性頭痛と比べると頻度は少ないですが、命にかかわる病気の可能性もあるので、頭痛以外に二次性頭痛を疑う症状が当てはまるようなら、病院受診を考えてください。

今まで頭痛なんて経験したことがないという人も、実際に今のご自身の血管リスクがどうなっているか、症状がないうちに把握してもいいかもしれません。二次性頭痛は突然倒れて自分ではどうしようもない状況に陥りやすいので、周りにも負担をかけます。ある程度の年齢を重ねたら、人間ドック・脳ドックを一度は考えてみてもいいのではないでしょうか。

一次性頭痛は、日常生活に支障が出ている、薬を使う頻度が多いなどあれば、病院受診をお勧めします。この時は頭痛専門外来を標榜しているところがよいでしょう。一度の通院で診断がつくことは稀ですが、漫然と痛み止めを使うよりも、診断がより確実になり、今後の対応がはっきりわかるようにしていく方が、結局のところ早く楽に過ごせるようになります。

頭痛で悩まれている人は多いものの、病院に行っても結局痛み止めだけだからあまり意味がないと感じている人もいると思います。

しかし、日常生活に支障が出ているような頭痛は我慢するよりも、一次性頭痛ならその対応策ができ、二次性頭痛の可能性を否定することもできるので、いつもと同じ頭痛と思わずに病院を受診することなど考えてみましょう。

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