賢い患者への道 第3回 本当の突然は危険

賢い患者への道

今回は症状のあらわれ方で、すぐに病院に行くべきかをどうかを判断するための手助けになるお話をしようかと思います。

突然倒れた、急に痛くなった と、症状がすぐに出たときは、なんだか重病っぽい印象が強くなります。しかし急に倒れたところを周りの人が目撃していたならまだしも、自分自身で急に痛くなったといっても、それぞれの尺度で異なり、本当に突然に発症したかは判断しにくいこともあります。

今回は本当の突然とは? と 本当に突然の場合は危険な病気の可能性が高い ことを解説します。

本当の突然とは? 症状が0から、発症を境に10(最大値)になったとき 0→10の出現

「急に症状が出現した」と一概にいっても、どの場合も、何もない状態から→変化があり→気づくという段取りのためすべての症状に当てはまってしまいます。

大事なのは症状の度合い(強さ)です。何もない状態(正常な状態)を0として、発症(自覚した)時がどのぐらいの強さで出現したかを1~10でたとえてみましょう。

例えば風邪症状でいうと、前日夜からのどが痛くなって(0→2ぐらい)、今日の朝になったらひどくなって(2→8)、熱も咳も出てきたから病院に来ました。という流れなら、のどの痛みの程度は0→2→8 といって1日経過で徐々に悪化している ということになります。

こののどの痛みでも、実際に聞くと昨日の夜から急に痛くなって という表現でもよいのですが、突然の発症とは意味が異なります。

本当の突然とは、0の状態から、気づいたときには最大の10になった状態を指します。実際は数分程度は10になるまで時間がかかる場合もありますが、最初が最大の症状だったというのがポイントです。

最初が最大の症状なので、その時に何をしていたかをはっきり覚えているぐらいのインパクトがあります(興奮したタイミングやものを飲み込んだ直後など)。

逆に、何をしているときに気づいたのかをはっきり覚えていないときは、そこまでの強い症状ではなかったか、徐々に症状が強くなったのか ということになります。

本当の突然=危険な病気の可能性が高い パターンは4つ

本当に突然の症状出現は、体の中で何が起きたか。この4つのどれかが起きたものと考えます

  • 破裂する
  • 詰まる
  • 裂ける
  • 捻じれる

かなり物騒な言葉です。例えば主語を血管にしましょう。そうすると、

  • 血管が破裂する=出血:脳なら脳出血、大血管なら動脈瘤破裂 など
  • 血管が詰まる梗塞:脳梗塞、肺塞栓症、心筋梗塞 など
  • 血管が裂ける解離:大動脈解離
  • 血管が捻じれる=捻転:血管ではまれ

血管の場合捻じれるパターンは少ないですが、ほかのものは生命にかかわる可能性の高い病気ばかりです。突然の頭痛、突然倒れる、突然動かなくなるなどで出現しますね。

捻じれるのは、腸や精巣や卵巣が有名です。腸捻転(小腸、S状結腸)、精巣捻転、卵巣茎捻転などです。捻じれることで、捻じれた部分の血流が流れなくなり、壊死してしまうのでこれも時間との勝負になります。(壊死する前にねじれをとれれば回復します)

ほかに肺が破裂すれば気胸という病気だし、気道にものが詰まれば窒息になります。危険度が高い病気が多いです。

なお突然発症でも命にかかわらない病気は、急性腰痛症(ぎっくり腰)や尿管結石、胆石疝痛ぐらいだと思います(かなり痛いですが、、)。結石の痛みは本当の突然よりも少し時間がかかっている場合も多く、本当の突然発症ではないかもしれません。(石が全部管にはまり込む前から、徐々に詰まってきて症状が出てくるため)

とはいえ、ぎっくり腰以外では判別をつけるのは難しく、0→10の強い症状が出た場合は、救急車での搬送が良いと思います。

まとめ

  1. 本当の突然発症:正常から最初に最大の強さで起きたとき(0→10)の発症のこと
  2. 発症した時の状況も細かく覚えているぐらいのインパクトがある
  3. 命にかかわる病気が多く、時間との勝負の場合もあり、基本は救急車での受診を考える

実際にこの「本当の突然発症」は、かなり稀です。ただ自分の身に降りかかったときや周りの人の具合が悪くなった時の、一つの参考にしてもらえればありがたいです。

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