病院を受診して、薬を処方される。よくある光景ですが、こんなことを聞いたことはないですか?
「血圧の薬とかは始めるとやめられなくなるのでしょう?」
風邪などの急病の場合では一定期間だけ薬を使って終了することが大半ですが、特に生活習慣病において「薬を始めるとやめられないからなるべく使いたくない」と希望される方もいます。ケースバイケースですが、生活習慣病において薬が必要な状況にまでなっているときは、残念ながら薬をやめるところまで行くケースはかなり稀です。
風邪などの急病とは何が違うのか。今回は生活習慣病の投薬の意義も含めて解説していきます。
薬を使う意味:根治治療か対症療法か
病気の原因に対して治療をする:薬はその一手段として使われていますが、実は治療目的が2つに分かれます。
根治治療:病気の原因となる根本に対して治療する
例えば、
- 肺炎などの細菌感染症:各場所に悪さする原因微生物が根本→それを退治するために抗生剤
- インフルエンザや新型コロナウイルス、帯状疱疹ウイルスなどの一部のウイルス:専用の抗ウイルス剤で退治
- 癌:効果のある抗がん剤でがんを小さくする・消失させるために使用 など
治療目的が病気の根本にあり、消失させる効果が期待できます。一度消失できたら継続して薬を使う必要性がなくなるので、一定期間で終了できます。
ただ、病気の根本に対して治療できること自体、そこまで多くありません。感染症に代表される急性の病気に関しては、一定期間で終了できることが多いので、印象に残りやすいと思います。
対症療法:症状の緩和を目的に行う投薬 病気の根本をよくするわけではない
薬に期待している効果と使われる頻度は、こっちのほうが多いはずです。例えば、
- 風邪の時の解熱剤、咳止め、痰切り、のどの薬
- 腰痛の時の痛み止め
- 下痢の時の整腸剤 など
無名のウイルスが原因で起きる風邪症状に関して、そのウイルスに対しての特効薬がないほうが大半であり、根治治療はできません。基本は自分の免疫力で改善していきます。
その間に出ている症状を緩和するために、解熱剤や咳止めなどを使います。特に病気の改善が速くなるわけではないので、我慢できるなら使わなくてもいいのです(症状がつらくて飲まず食わずだと、改善に影響してしまいますが)
また症状がなくなったら、やめてしまっていい薬になります。緩和するものがなければ、むしろ効果も期待できないので、飲まないほうがいいことさえあります。
生活習慣病の薬はどっち? 対症療法の薬です
生活習慣病の薬:高血圧の時に使う降圧剤、糖尿病の人が使う血糖を下げる薬、高脂血症のコレステロールを下げる薬などですが、確かにそれぞれの目的に合わせた効果があります。
ただ、高血圧の根本原因は血管の老化(参考記事:高血圧は生活習慣でどのくらい下がるか)であり、降圧剤で血管をひろげたりしても、血管が若返るわけではないのです。
同様に糖尿病で血糖を下げたとしても、いままで蓄積した糖代謝物からの動脈硬化が改善するわけでもなく、コレステロールを下げても血管に蓄積した脂肪代謝物(プラーク)がとけてきれいになり、血管が若返るものでもないのです。
今の状態をこれ以上悪くしないために、それらの薬を使うことが目的なので、最初の疑問
「血圧の薬(生活習慣病の薬)とかは始めるとやめられなくなるのでしょう?」
の答えは、「やめられません」となります。
一方で、生活習慣が大きく乱れている若年であれば、生活習慣の改善だけでまだ間に合うこともあるので、あくまでケースバイケースになります。
対症療法(生活習慣病では症状ありませんが)のため、薬を使用しているときは効果がありますが、やめたら元の状態に戻ります。血圧の薬や高脂血症の薬をやめたら、同じ状態に戻るだけなので、今後の健康的な生活をなるべく維持したい希望なら、やはり継続投薬が必要ですということになります。
普段定期的に薬を処方されている人は、飲んでいる薬の大部分は根本的な治療ではなく、状態を悪化させないための対症療法を続けている というのが現状です。
「そんなの必要ないじゃないか」と思われる方もいるかもしれません。ただ、この継続的な対症療法を続けてきたことが、今の日本の寿命の長さにつながったのです。老化にあらがうために人間が行ってきた対策ともいえるでしょう。
まとめ
今回は生活習慣病の薬をやめられるのかについて解説しました。
- 薬には根治治療と対症療法の2つの目的で使われる
- 根治治療できる病気は急性のほうが多いものの、それでも限られている
- 生活習慣病の薬は対症療法。根本を治すわけではないためやめられない。
- 悪化させないための継続治療が、寿命を延ばしている要因の一つでもある
皆さんも今飲み続けている薬があれば、まだ本当に必要な対症療法の薬なのかを自分の症状などに照らし合わせて確認し、主治医の先生とも相談してみてはいかがでしょうか。


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