皆さんは、自分が健康診断などで「血圧が高めです」といわれたり、家族・友人が血圧が高いと言われたと聞いたりすることがありますか?この時に必ずというほど、「生活習慣を見直しましょう」、「塩分取りすぎに気をつけましょう」、「運動しましょう」などとアドバイスされますが、実際どのくらいのことをしたら、どのくらい血圧が下がるか具体的にご存知でしょうか?
なかなかそこまでアドバイスされる機会は少ないと思います。実際のデータに基づいて、生活習慣の改善例と実際の血圧が下がる数値の目安について解説したいと思います。
思ったより厳しい生活習慣改善をしても、そこまで数値は下がらないと思われるかもしれません。そのため、高血圧といわれる前の段階で対応することが大事になっていきます。
生活習慣の改善と実際に下がる血圧の目安
- 減塩:1日当たりの塩分を1g減らすと約1mmHg程度下がるといわれてます。摂取量が10g以上から6g未満まで下げると平均5mmHgの低下が期待できるとされます。極端な減塩(3g/日未満)まで減らすと8mmHg以上下がる場合も報告されています(JAMA、アメリカの研究報告から)
- 食事改善(DASH食):野菜・果物・低脂肪乳製品を多くとり、赤肉や糖分、脂肪を減らすことで平均6mmHg(収縮期血圧、上の血圧といわれます)/3mmHg(拡張期血圧、下の血圧ともいわれます)下がる効果が期待されます。
- 運動習慣:定期的な有酸素運動を週3回以上、30分を3か月行うことで、平均4mmHg(上の血圧)/2mmHg(下の血圧)の効果があります。肥満症の人ではより効果的な場合もあります。
- 減量:体重-1kgごとに、0.5~2mmHgの低下効果が見込まれます。ただ適正体重を維持することが大事であり、あくまで肥満症の人ならではの効果になります。
- 節酒:適量(日本酒1合、ビール中びん1本、グラスワイン2杯以内)で週2回は飲まない日をつくるのを基準にして、これ以上飲んでいる場合は現在の量を80%減らすことで数mmHgの低下効果が期待できます。
- 喫煙:タバコを吸うと15分ほど血管が縮むことで血圧が一時的に上昇します。持続はしませんが、繰り返しているうちに、血圧が高くなる原因になっていきます。
あれ?思ったより1つの項目ではそこまで劇的に数値は下がらないと思いませんか?また現在の生活習慣がそこまで血圧に悪いことをしていないし、そもそもできる生活習慣改善が少ないと思われる人も多いのではないかと思います。
そもそも、なぜ血圧が高くなったのでしょうか?
高血圧とはどういうものか から説明していきます。
高血圧の正体 血管の老化とは?
正常な血管をゴムホースにたとえてお話しします。血圧とは「血管を内側から押す力」です。決める要素は「心臓から押し出す力」と「血管の固さ」になります。今回心臓から押し出す力に関しては、別の要因になるのでここでは割愛します。
血管が新しいゴムホースであれば強く押し出されても、血管が伸びて圧力を逃がすため、血圧が過剰に高くなることを防いでいます。
ただ、血管にかかる圧力が強くなっていくと、血管の内側に伸び縮みする際に徐々に小さな傷をつけていきます。ゴムホースに傷がつくとその部分が伸び縮みしにくくなります。
さらに傷口をふさぐ機能が働いて、傷を治しますが、元の様に伸び縮みはしない固い物質に置き換わります(これが繰り返し起こると石のように固くなっていきます=動脈硬化)。ゴムホースが土管の様に変化すると、圧力を受け流せず、血管の壁に強く圧力がかかるため、高い血圧と測定されます。
高血圧とは、血管が固くなってきました(動脈硬化がすすんできました)=血管が年老いてきましたという証なのです。
生活習慣と血圧の関係は?
塩分が多いと、血液の成分量が増えます。血管を押すものが増えるので、より強く血管に圧力をかけます。より血管の内側に刺激をかけるため、そこから血管の動脈硬化が徐々にすすみます。
タバコは一時的とはいえ血管を収縮(縮める)作用があります。この時に血管に強く負荷をかけるため、繰り返していくうちに動脈硬化を悪化させる要因になります。
肥満や運動不足は、直接血圧に影響に及ぼすことは少ないものの、他の生活習慣病(糖尿病、脂質異常症など)との兼ね合いから、動脈硬化が進み、徐々に血圧も高くなっていく悪い相乗効果となってでてきます。
本当に効果的な生活改善とは? 心に決めたその日から始めよう
血圧は心臓が動き始めた時から、発生していきます。生まれた時にはすでに血管に刺激をあたえているのです。もちろん、子供の時は血管も若いため血圧が高くなることは稀です。ただ人間は必ず年を重ねるため、血管年齢も徐々に年老いていくのは避けられません。
なので、よけいな老化を加速をさせないために、血圧が高いといわれる前から、できる範囲でやってみることが重要です。すでに高血圧と言われた時には、血管がすでに年老いており、動脈硬化があるという状況です。ここから生活習慣を改善しても、血管が若返るわけではないのです。
だから、生活習慣の改善をしても、下がる数値は限定的なのです。相当生活習慣が乱れていれば、10mmHg以上下がる可能性もありますが、相当強い生活制限で継続できるかは難しいのではないかと思います。
だからこそ、生活習慣を改善する時期は、血管がまだ老化しきっていないとき=やるなら「今でしょ」となります。
「できることを無理なく継続していくこと」で、血管の老化をなるべく加速させずに、将来健康でいられる可能性を上げていけます。
まとめ
- 生活習慣の改善と具体的な血圧低下の効果:1項目単位では劇的には下がらない
- 高血圧とは血管の老化による結果。老化してしまったら若返ることは難しい
- 生活習慣改善をするなら、血管が老化する前:血圧が高いといわれる前から行う
- 無理なく継続できること
皆さんの健康改善に少しでもお役立ての一助になればありがたいです。ここまで読んでいただきありがとうございました。


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