賢い患者への道 第6回 胃カメラの楽な受け方

賢い患者への道

前日の準備 当日の流れ 麻酔について

胃カメラを受けるきっかけは、どんなものがあるでしょうか。

胸やけ、胃が痛いなどの症状があるときや、胃がんが心配で検査するといったところが多いのではないかと思います。

しかし、

「胃カメラって検査するのがつらいんじゃないの?」

「麻酔すればいいっていうけど、本当に大丈夫なの?」

「鼻からするほうが楽なの?」

「検査の前日とか、終わった後にしなきゃいけないこととかあるの?」

などの疑問があると思います。

このページだけで全ての疑問が解消しますので、安心してください

さらに難しいことは全くありませんのでご安心ください

今回の記事は、胃カメラを受けるうえでの流れを概説しつつ、医者側が何を目的に、どんなことを考えて行っているかも解説します。

自分にされている意味がわかれば、より安心して検査を受けることができるはずです。

細かいところは実際に受ける病院・クリニックで異なると思いますので、確認してみてください。

検査前日から当日朝まで:ちょっとした食事制限だけ。

前日の夕食は消化に良いものを少なめに摂取するようにします。

脂肪分の多い食事や、繊維質の多いものを控えるように言われることが多いと思います。

時間は21時ごろまでに済ませてください。

水分(水、お茶程度)は検査予定の2時間前(当日朝ぐらい)までなら飲んでよいですが、牛乳やジュース、コーヒーは避けましょう。

理由:胃カメラでは、胃の中を空にして観察するのが大前提です。

夜遅く、消化の悪いものの場合、翌日にもまだ胃の中に残る場合があります(例:0時過ぎにラーメンを食べた)。

自分で思うより胃の中に食物は長く残留しています。

また牛乳やジュースなどの色がついている飲み物も、胃の表面に残ってしまうことがあり、胃の粘膜をみるのに邪魔をしてしまうことがあります。

当日朝の食事はもちろん食べないようにしましょう。

当日:カメラを入れる前まで

病院・クリニックについたら、体調の確認など行い、検査の準備に入ります。

施設によって、順番・やり方は若干異なりますが、よく行われている例で挙げていきます。

胃の環境を整える:泡を消す薬と粘液を分解する薬を飲む

まず胃の泡を消す液体の薬(商品名:ガスコン)と胃の粘液を分解する薬(プロナーゼ)を飲みます。

プロナーゼを飲んだ後は、横になり、1回転するようにゴロゴロと体制を変えるように指示されます。

理由:薬を胃の中全体に届くようにするためです。実はこの前処置が観察するうえでとても重要です。

しっかり胃の中がきれいになると、小さな病変を見つけやすくなったり、検査する時間も短縮できる可能性があります→苦痛が減ります。

のど・(鼻)の麻酔:表面の感覚をなくすため、ゼリーやスプレーで行う

検査する台に移動して、のどの局所麻酔をします。

ゼリーで口の中に少し含んでもらった後に飲み込んだり、スプレーで吹き付けたりします。このスプレーは結構辛く感じます

鼻の場合は、鼻腔の中にスプレーを吹き付けます。

左右どちらが入りやすいかは、最初の時はわからないため、両方の鼻に吹き付けることが多いでしょう。

理由:カメラが通るときの違和感を軽減する目的です。

接触するときの痛みは感じないと思いますが、触っている感覚は残っています。

そのため、狭いところを通るときにある圧迫感は残ります。

検査開始後に、この圧迫感で、呼吸がうまくできず、パニック発作のようになる方もいます。

呼吸はできるはずなので、慌てずに「鼻からゆっくり吸って、口からゆっくり吐く」を繰り返しましょう。

筋肉注射:胃の動きを抑える薬

よく使われるのは「ブスコパン」と呼ばれる、胃や腸の動きをなくす薬を筋肉注射します。使えない人もいるので、その場合「グルカゴン」という薬を用います。

施設によっては、この筋肉注射はせず検査を開始し、胃の中に「ミンクリア」という薬液を直接胃の粘膜にふりかけ、同じ作用を効かせるところもあります。

理由:内視鏡で検査をしているときに、胃が動くとカメラの動きを妨げたり、病変が動いて処置がしづらくなったりします。

結果的に検査時間が長くなる可能性もあるので、できれば使用したいところです。

なお、ブスコパンは、狭心症などの心臓病や緑内障、前立腺肥大の人には使用禁止となっています。

これらの病気がある人はグルカゴンの使用となりますが、こちらは血糖値が上昇するという作用もあるので、糖尿病の人に使うのはためらわれるものです。

ミンクリアはそこまで大きな副作用はありません。

胃カメラの目的なども考慮して、これらの薬が必要かどうかを判断します。

点滴を行う:鎮静剤などを使う場合

寝かせて検査する」、「寝ている間に終わった」という状態にするには、必ず点滴からの麻酔薬が必要になります。

施設によって使う薬品は異なりますが、意識レベルを下げる作用は同じです。

全身麻酔とは違うのか?といわれると、痛覚刺激を与えても覚醒しないようにするという点からは全身麻酔に含まれます。

外科手術などと違う点は、筋弛緩薬(筋肉を強制的に緩ませる薬)は使わないことです。

呼吸は自分自身の力で行っています(人工呼吸器は使わない)。

ただ鎮静剤が効きすぎると、呼吸をしなくなることがあるので、検査中も効きすぎないように調整しています。

検査が終わった後も、すぐに点滴の薬の効果がなくなるわけではないので、少し休んでから帰宅することになります。

その際に、自転車・自動車などの運転はやめましょう(検査予約の時に案内されると思います)。

医者側の視点:鎮静剤を使うことで、検査をしやすい環境にできるのは大きな利点です。

ただ、効果が効きすぎて、呼吸が止まりかけてしまったり、検査が終わってもなかなか起き上がれなかったりと、デメリットもあります。

検査の受け手側も楽にしつつ、医者側もストレスなく、うまく検査を回せるようにいろいろ工夫をしています。

検査開始:まずのどを越える

鼻からの内視鏡では、まず鼻のすき間からカメラを通して、のどに進みます。口からの内視鏡では、舌に沿わせて、のどの奥の方にすすみます。

たとえ全身麻酔をしている状態でも、カメラが触れていることは認識できる可能性があります。

唾液を飲み込むなどの動作をすると、カメラがのどの壁に接触するので、またそれが違和感として感じます。

検査の受け手側のコツ喉の奥にある唾液を飲み込まない、下向きにして、外に自然に流れるようにする。

胃カメラでの一番の難所は食道の入り口です。一番狭くなっており、ここは必ずカメラとのどの壁が強く接触します。

どんな胃カメラがうまい人でも、この接触は避けられません

ここが一番胃カメラでつらいと感じる人が多いところです。

なぜなら、この違和感を強く感じ、のどを締め付けるように力が入ると、さらに通り道が狭くなります。

→この狭くなった通り道を何とか通ろうと、カメラを強く押し入れようとします。

→さらに違和感が強くなり、、、の、負のループが始まります

全力でのどに力を入れたときは、食道へスコープを進めることは困難です(無理と言ってもいい)。

それだけ人間の全力抵抗は強いのです。

鎮静剤を使っても、先ほど言った通り、筋弛緩薬は使わないので、反射的に体の力を入れることはできます(全力で力を入れることは難しいと思いますが)。

なので、鎮静剤で寝て終わったと思っても、のどの痛みが後から出てきたということはありえます。

寝ていても反射的に、のどを強く締め付けていたためと考えられます。

胃カメラがうまい人=のどを越えるときの手加減が上手な人とも言えそうです。

検査の受け手側のコツ「脱力」、これに限ります。

具体的には、ゆっくり深呼吸する、飲み込む動作をする(唾をのむ)方法です。指示が聞こえているなら、言われたタイミングでやってみるとうまく食道へ入れてくれます。

完全に鎮静しているが、力が入ってしまっている場合はどうするかというと、

のどの手前で少し刺激をし、飲み込んでもらう動作を待つか、咳をさせてその時にカメラを進めるか、になります。

医者側の視点:なるべくのどに力が入らないよう入れていきますが、せき込んでしまったりすると大きく全体が動いてしまうので、違和感を完全になくすことはできません。

鎮静剤で寝かせてしまったら、そこまで強くのどを締め付けることは稀ですので、とりあえず食道内に入れることはできますが、力業で入る場合があります。

理想は、受け手側が脱力しているときに食道へ進めることです。

先ほども記載したように、飲み込む動作に合わせてカメラを進ませるとスムーズに入ります。

ここは「二人の息を合わせる」ということも重要になります。鎮静しないほうが、むしろうまくできることもあり得ます。

検査:食道内

ここまでスコープが入ると、基本的には、先ほどあったのどの狭いところにスコープが通過している違和感だけになります。

唾液が喉の奥にたまってきやすいので、せき込んでしまうことが出てきます。

これも下向きよりにして、外に垂れ流すように心がけましょう。

なおスコープの違和感は検査中消えないので、どんなに咳き込んでも、完全になくなることはありません

食道の観察自体は一直線で空間も広くないので、1分程度で、時間も長くかからず、胃のほうに進んでいきます。

医者側の視点:食道は主に粘膜の凹凸、色の変化でみていきます。この場所では緑色の画面でよく映っています。

NBIと呼ばれる光の波長を制限したモードにしており、より表面の血管の変化などを見やすくしています。

一見暗くて見えにくいような画面ですが、こちらの方がより食道がんなどを見つけやすいのです。

なお食道以降まで進んだあとに、全力でのどの力を入れると、スコープを動かすことができないぐらいまで締め付けることができます。

ただ、ここまで締め付けられると、検査も進まず、カメラも抜けずとどうにもならないので、「とにかく脱力」を意識しましょう。

検査:胃の中 カメラが動く・空気が入るなど、おなかへの違和感が強くなりがち

胃の中に入ると、ある程度の空気(もしくは二酸化炭素)で膨らませて観察していきます。

胃の奥にカメラを進めるとき、胃の底側に沿って進ませるため、カメラ本体で胃をのばしていくことになります。

この2つの影響で、おなかが張るという状況になります。

胃の表面を細かく見ていくので、ここに食べ物や飲み物、薬の残りカスでも結構邪魔になります。

ある程度は洗い流すことは可能ですが、検査時間もより長くなるため、きれいな状態で行うということはとても大事なことになります。

胃の粘膜の状況で、ピロリ菌の存在の有無がある程度推測できます。

ピロリ菌がいる粘膜では、胃炎の状態が目立つため、その中にがんがあるかどうかより慎重に見ないといけません。

おおよそ胃の中の観察は、何もないきれいな粘膜なら3・4分程度と思います。

ピロリがいるような粘膜などでは、もう少し時間がかかることもあります。

検査の受け手側のコツ:胃の中の空気はどうしようもないので、のどの力と同様におなかの力も緩めるようにしましょう。

げっぷが出ても仕方ないのですが、少し顎を引いて下を向く感じにするとげっぷが出にくくなります。

医者側の視点:胃の中に入ったら、まずピロリの有無を検討します。

まだピロリ菌感染がありそうなら、より慎重に胃の粘膜を見て、発赤のありそうながんを探していきます。

ピロリ除菌後の場合も同様に発赤のありそうながんを注意深く見ていきます。

ピロリがいないきれいな胃の粘膜の場合、がんのリスクは低いのですが、白色調の色合いが異なる粘膜があると、がんの可能性を考慮します。

時間をかければかけるほど、おなかの空気がたまって苦しくなってしまうので、くまなく探しつつ、短時間で済ませるということが大事です。

8.検査:十二指腸の中まで

胃カメラで届く一番奥が十二指腸です。胃の底側に沿ってカメラを進めて、胃の出口から十二指腸に入ります。

十二指腸に入ってすぐに急カーブがあります。このカーブを超えるときに、カメラを抜く動作をします。

この時に胃が引っ張られるので、違和感が強くなるかもしれません。

奥までカメラが進んだら、あとは抜く動作だけなので、そこまでの違和感はないはずです。

十二指腸も、そこまでスペースが広くないので、観察自体は何もなければ1-2分でおわります。

検査の受け手側のコツ:十二指腸という小腸の中にカメラが入っているので、より空気が腸管全体にいきわたりやすいです。

そのため、全体的なおなかの張りが出やすいところです。おなか全体の力を抜くことが重要です。

医者側の視点:急カーブとスコープの操作があるので、少し注意が必要です。

まだ検査はじめたての人などで、腸に穴をあける「穿孔」の合併症が起こる唯一のところと言っていいです。

病変自体は十二指腸潰瘍、ポリープなどが主で、がんが少ないところではありますが、注意してみていきます。

あとはカメラを抜いて、終わりです。抜く前に食道やのどの状態も再度チェックして終わります。

検査時間は、特に異常なければ5分弱精密検査などあっても10-15分程度で終わると思います。

検査終了:その後は?

鎮静剤を使っていれば、拮抗薬(効果を打ち消す薬)を使う場合があります。その後、回復室に移動し、休んでいきます。

のどの麻酔が1時間ほど効果が続くので、その間は飲み込みにくくなります。

ある程度時間がたった後に飲み物がうまく呑み込めれば、その後は制限なしとなります。

組織を生検(組織を一部削って顕微鏡の検査に出すこと)した、などの傷をつける行為をした場合は、食事などの制限が少しつくことがあります。

詳しくはその時に病院側からまた指示があるのでそれに従うようにしましょう。

鎮静剤が完全に効果がなくなるまでにかかる時間は、個人差があります。

安全に車の運転など行うには24時間は間隔をあけるように推奨されています。

薬が切れているように思えても、ふらつきがあったりしますので、当日は検査後も気を付けるようにしましょう。

まとめ

胃カメラの検査の流れと受け側のコツ・医者側の視点についてお話ししました。

受け側のコツは「脱力」に限ります。特に「のど」と「おなか」です。

不安が強いと、この脱力が難しくなり、=検査がつらい につながります。この不安を取り除く意味で鎮静剤が有効です。

鎮静剤自体にも、良い面とリスクがあります。

高齢でなければそこまでのリスクはありませんが、100%安全というのは残念ながらありません。

鼻からの胃カメラは、利点は細いことで、のどの通過は口からのカメラよりも楽です。

ただ、胃の中の観察などには口からのカメラにまだ劣る場面があります。

検査前後には、そこまで大きな制限はありません。鎮静剤を使うようなら、当日に大きな仕事などは入れないようにした方が賢明です。

少しでも皆さんの疑問の解決にお役立ていただければ幸いです。

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