第3回:口から食べられなくなった。代わりの方法ランキング 「本人の負担」編

口から食べられない代わり

第1回目では口から取れなくなった時に、代わりにする方法をご紹介しました(別記事:第1回:口から食べられなくなった。ご紹介編)。第2回目では栄養的にどの方法が一番有用なのか(別記事:第2回:口から食べられなくなった。栄養編)を紹介しました。

今回は本人の負担の面から、ランキング形式で並べてみようと思います。並べるのは胃瘻、経鼻胃管、CVポート、中心静脈栄養の4つです。開始準備時にかかる負担と普段使いの時の負担、および交換時に考えられる負担を加味していきます。

開始準備時にかかる負担

準備段階でかかる負担は、胃瘻なら造設時にかかる負担、CVポートも埋め込み時にかかる負担、経鼻胃管や中心静脈カテーテルを直接留置するのは、入れるときにかかる負担です。負担の少ない順だと、

  • 1位:経鼻胃管、中心静脈カテーテル留置
  • 痛みは経鼻胃管>中心静脈カテーテル、不快感は中心静脈カテーテル>経鼻胃管)
  • 2位:CVポート造設
  • 3位:胃瘻造設

経鼻胃管は、鼻とのどを通るときに不快感と痛みを伴います。時間的には5分もかからず入るため、かなり短いです。留置した後は痛みはなくなりますが、不快感はある程度残ります。

中心静脈カテーテルは留置時に皮膚へ局所麻酔をするので、針を刺して管を入れるときに痛みはそこまで感じません。しかし血管に刺されるときや、チューブが入るときの違和感・不快感は経鼻胃管よりも大きいとされています。処置時間も早ければ15分程度で終わりますが、難しい人だと30分以上かかる場合もあります。

この二つのどちらがつらいかは、個人的感覚にも左右されるので、どちらがつらいかは人によると思います。そのため、同率1位扱いとしました。

その次にCVポート造設としました。皮下に埋め込むときに局所麻酔するので、痛み自体はほぼないと思いますが、処置後の創部は直接留置よりも大きくなるので、その分負担が大きくなるとしました。また処置時間も1時間前後はかかると思われます。

開始準備時の負担で一番かかるのは胃瘻造設と判断しました。内視鏡を受ける負担、局所麻酔するとはいえ、穿刺+本体を留置するときの痛みと不快感、処置時間も1時間前後必要であることを考えると、この中では一番負担はかかると思われました。

普段使いの負担

  • 1位:中心静脈カテーテル
  • 2位:CVポート
  • 3位:胃瘻
  • 4位:経鼻胃管

栄養を入れるときの負担は、特に本人に対してはありません。周りのサポート的にCVポートは針をポート部に刺す必要がありますが、慣れればそこまで大変ではありません。中心静脈の場合は、唾液が増えるということもなく、普段使いに関しての負担は少ないでしょう。ポート穿刺をする手間の差を考えて、1位に中心静脈カテーテル、2位にCVポートとしました。

胃瘻、経鼻胃管に使用するうえで多くなるのが、痰がらみです。腸管を使うと、唾液が増えてきます。その唾液がうまく呑み込めず、喉奥で溜まってしまい、誤嚥の元になります。また経鼻胃管はそこに管も入っており、唾液などがまとわりついて、より誤嚥のもとになりやすくなります。

そのため、自分で痰を出すこともできないときは、周りが吸痰をします。この吸痰処置がかなりつらいものとされています。とはいえ、痰が多くて呼吸しづらい状態もかなりつらいため、吸痰を避けられない状況が多いです。

よって、胃瘻が3位、経鼻胃管が4位としました。

交換頻度、交換時の負担

これらはそれぞれ、交換する目安があります。目安なので、使えるのなら長く使ってもよいとは思いますが、消耗品でもあるので、通常は目安通りに交換していきます。

  • 1位:CVポート
  • 2位:胃瘻
  • 3位:中心静脈カテーテル
  • 4位:経鼻胃管

CVポートは一度埋め込み造設すれば、基本は交換不要なことが多いです。カテーテルが詰まったり、CVポート部分などに感染が起きた場合は交換になります。特にトラブルがなければ決まった時期はなく、年単位で使用できる場合もあります(耐用年数は2-5年ぐらいといわれています)。

胃瘻は、造設時の負担はこの中で大きいですが、作ってしまえばその後は約半年目安で交換になります(胃瘻のタイプによっては月1回だが、交換も容易)。レントゲンか内視鏡どちらかを用いて、交換します。通院は必要ですが、そこまでの頻度ではなく、交換時も15分程度の処置で終わります。

中心静脈カテーテルも、特にトラブルがなければ継続使用できます。しかし、CVポートと異なり、感染の合併症が月日がたつごとに可能性が増えてくるため、感染兆候が出たら、抜去。その後また再挿入になります。短い人だと1か月以内のこともありますし、半年たっても感染しないという人もいます。点滴ケアの関係上、自宅で継続して行うのはハードルが高くなります。

経鼻胃管交換目安が2週間から4週間と短めであり、入れやすいくもありますが、その時にまた痛みなどがあることを踏まえると、ほかの方法よりも負担が大きいように思えます。

まとめ・総合ランキング

すべて含めて、どれが一番負担が少ないか

1位:中心静脈カテーテル(在宅は難しめ)

2位:CVポート

3位:胃瘻

4位:経鼻胃管

本人・周りの負担もすべて加味すると、上記順位と判断しました。中心静脈カテーテルは在宅を考えないという条件になりますが、本人的には感染の合併症さえなければ、留置時の負担と違和感だけです。痰が増えて、吸痰する回数が多くなることもありません。交換もなるべく少なくするようにできます。

在宅考えで、負担順となるとCVポートが次になります。埋め込み時の負担はありますが、感染合併率も減らして、より長期に使用できる可能性があります。交換も基本はしなくていいこともあります。

その次に胃瘻になります。負担だけを考えるなら、作るときと交換時にかかります。また経鼻胃管ほどではないですが、痰が増えることはあるので、吸痰が必要になる可能性があります。

一番負担が重いのは経鼻胃管と思われます。導入は簡単ですが、持続する鼻・のどの違和感と痰がらみの悪化、交換頻度が短いこともあり、やられるのはきつそうです。

ただ第2回:口から食べられなくなった。栄養編のとおり、腸管を使う栄養のほうが、有利な面も多く、負担だけを考えて選択するものではありません。

どのくらいの期間使用する可能性(ずっと?一時的?)があるのか、本人の状態や希望がどうなのか、療養場所は(自宅?施設?療養病院?)どこなのかなど、ほかにも押さえておく条件があるので、この3回の内容を踏まえて、相談してみてはいかがでしょうか。

次回はどんな時に、どの選択をお勧めするのか、実際に例示して解説します。

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