消化器医師が推奨する:過敏性腸症候群に効果的な食事5選

医療

おなかが痛い、便秘になる、下痢しやすいなどのおなかの症状が長年続く。内視鏡検査も含め全部したけど、異常がない

この時につけられる病名がこの「過敏性腸症候群」です。

ストレス性腸管運動機能異常とも言いましょうか、腸の機能がストレス・疲労などからうまく動かず、腹痛・下痢・便秘の原因となっているものです。

特効薬がないので、いかに日常生活を含めうまく付き合っていくかが焦点になりますが、今回は「食事」について取り上げて解説します。

結論

過敏性腸症候群(IBS)の症状改善において最も有効なアプローチは、「低FODMAP(フォドマップ)食」をベースに、個人の耐性を見極めることです。

単に特定の食品を摂るだけでなく、腸内での発酵を抑える引き算の視点が不可欠です。

FODMAP食とは。

FODMAPとは、小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすい4種類の糖質の総称です。

これらを控える「低FODMAP食」は、過敏性腸症候群(IBS)や原因不明の腹痛・下痢・ガス溜まりを改善する世界的に推奨された食事療法です。

FODMAP比較表

カテゴリ高FODMAP(避けるべき)低FODMAP(選ぶべき)
穀類小麦(パン・パスタ)、うどん米、玄米、そば(十割)、米粉
野菜玉ねぎ、にんにく、ごぼうキャベツ、レタス、トマト、なす
果物りんご、桃、ドライフルーツバナナ、キウイ、いちご、みかん
乳製品牛乳、ヨーグルト豆乳(調整以外)、アーモンドミルク
豆類大豆、小豆、納豆厚揚げ、豆腐(木綿)、味噌


具体的なおすすめメニュー例

  • 朝食:ごはんと焼き魚、木綿豆腐の味噌汁(パンと牛乳を控える)
  • 昼食:十割そば、または親子丼(うどんやパスタを避ける)
  • 夕食:ステーキや焼き鳥(塩)、生野菜サラダ(玉ねぎドレッシング抜き)

低FODMAP食にするポイント

  1. 発酵性糖質の制限: 小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい「FODMAP」を控えることで、腹痛や下痢・便秘を抑制します。
  2. 水溶性食物繊維の選択: 不溶性食物繊維は刺激が強すぎる場合があるため、キウイなどの水溶性を優先します。
  3. フェーズ分けの実施: 完全に除去する時期と、再導入して自分の「許容量」を知る時期を分けることが長期的な成功の鍵となります。具体的に3段階に分けて行い、第1段階では高FODMAP食品を2-6週間厳格に制限。第2段階で段階的に再導入。第3段階で個人の耐性に基づいて食事を個別化していきます。

実際に低FODMAPにするとどうなるのか

FODMAP(糖質)を、駅の改札を通ろうとする大量の乗客に例えてみましょう。

通常の食品はスムーズに改札を抜けますが、高FODMAP食品は「切符を持たない乗客」のようなものです。

小腸=改札、大腸=駅構内と仮定すると、なかなか改札(小腸)を通れず滞留し、そこで騒ぎ(発酵・ガスの発生)を起こします。

さらに、彼らを押し流そうとして大量の雨(水分)が流れ込み、結果として駅構内(大腸)が大混乱(下痢・腹痛)に陥るのです。

低FODMAP食とは、この「切符のない乗客」を事前に制限し、駅の平和を守る行為と言えます。


過敏性腸症候群に効果がある食事5選

IBSの症状を和らげるためには、腸への刺激を最小限にしつつ、消化を助ける食品を選ぶ必要があります。

キウイフルーツ

キウイは、IBS(特に便秘型)において非常に推奨される果物です。

  • 理由: 豊富な水溶性食物繊維を含み、便の水分量を適切に保ちます。また、低FODMAP食品であるため、お腹の張りを引き起こしにくいのが特徴です。
  • 効果: 1日2個の摂取で排便頻度が改善したという研究報告(モナシュ大学等)があります。

生姜(ジンジャー)

古くから消化補助として使われてきた生姜は、IBSのガス感や痛みに有効です。

  • 理由: 生姜に含まれる「ジンゲロール」には、消化管の運動を促進し、ガスの排出を助ける作用があります。
  • 効果: お腹の痙攣(痛み)を和らげ、食後の不快感を軽減します。

ペパーミントティー

ハーブティーの中でも、ペパーミントは「天然の平滑筋弛緩剤」と呼ばれます。

  • 理由: メントール成分が腸の筋肉の過剰な収縮を抑えます。
  • 効果: 腹痛や腹部膨満感の緩和に即効性が期待でき、欧米のガイドラインでも推奨されています。

米(白米)

主食の選択はIBS管理の土台です。小麦(パンやパスタ)に含まれるフルクタンは高FODMAPですが、米は低FODMAPです。

  • 理由: グルテンを含まず、消化吸収が非常にスムーズであるため、腸内での異常発酵を避けられます。
  • 効果: 腹痛や下痢のリスクを最小限に抑えつつ、安定したエネルギー源となります。

ラクトースフリー製品(または硬質チーズ)

乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)は、多くのIBS患者にとって不調の原因となります。

  • 理由: 乳糖を除去したミルクや、製造過程で乳糖が減少している硬質チーズ(チェダーやパルメザン)は、低FODMAPに分類されます。
  • 効果: カルシウム摂取を維持しながら、乳製品による下痢やゴロゴロ感を防ぎます。


比較表:IBS食事療法のベンチマーク

療法名主なターゲットメリットデメリット根拠の強さ
低FODMAP食腹痛・ガス・下痢IBSに対して最も高いエビデンス実践の難易度が高く、栄養偏りの懸念★★★★★
グルテンフリー腹痛・下痢小麦全般を避けるため分かりやすい非セリアック病での効果は個人差大★★★☆☆
高食物繊維食便秘型IBS排便を促す不溶性繊維を摂りすぎると症状悪化★★★☆☆
プロバイオティクス腸内フローラ改善根本的な体質改善が期待できる自分に合う菌を見つけるまで時間がかかる★★★★☆


まとめ

過敏性腸症候群に効果がある、低FODMAPについて解説しました。

まずは 3日間、毎食の記録と症状(ガスの出具合、便の形)をメモすること から始めてみてはいかがでしょうか。

自分のトリガーとなる食品を特定することが、サプリメントを飲むよりも遥かに早い解決策となります。

効果がないと感じても、いつかは自分にあうような対応が見つかるはずです。

ゆっくり付き合っていく方法を、無理のない範囲で見つけていくことが大事です。

食事だけではなく、日常生活におけるストレス解消法やリラックス法なども併せて試していき、少しでも症状のない生活が送れるようになれれば幸いです。


参考資料

  1. Monash University IBS Diet (Low FODMAP Dietの開発元)
  2. 日本消化器病学会: 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020(過敏性腸症候群)
  3. 厚生労働省 e-ヘルスネット: 食物繊維の必要性と健康
  4. Rome IV Criteria: 診断基準および治療アルゴリズム

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