消化器内科医が解説する胆のう結石症のホントのところ:経過観察?手術?

医療

ケース1:「夜に胃痛がよく起きるのに胃カメラしたけど異常がない」→後日腹部エコー検査で、胆のう石が発覚した。

ケース2:「健診で腹部エコー検査をしたら、胆のう結石があるって言われた」→症状ないけど治療が必要?

「胆のうに石がある」ということを、周りでも聞いたことがあるのではないかと思います。

ただ、どういう人に症状が出てどういう状況なら治療を考えるのかまで知っている人は少ないと思います。

胆石ができる場所でも方針が変わりますが、今回は一番頻度の多い胆のう結石」について解説したいと思います。

症状が出るとき突然なことが多く、急に当事者になることもありえます。

この記事では、胆のう結石症についての疫学や発作のリスク・治療法などについて消化器内科の視点から解説していきたいと思います。

ケースに対しての回答

ケース1:症状が頻回に出ているので、まず手術治療を第一に推奨

ケース2:有症状となるリスクがあるかどうかを判断し、経過観察なども含めて相談

胆石はどのくらいの人にできる?

1993年の調査で胆石保有者は1,000万人を超え人口の約10%に達したといわれていますが、その後の調査はされていません。

しかし、肥満者の約25%が胆のう結石もちであり、成人の肥満人口が増加していることから、

胆のう結石保有率は現在さらに増加していることが予想されます。

2013年の日本胆道学会の全国調査では、胆石症の部位別内訳は、

胆のう結石74.5%総胆管結石(胆のう結石合併含む)25.6%肝内結石3.7%でした。

胆石の成分は?

  • コレステロール結石
  • ビリルビンカルシウム結石
  • 黒色石

代表的なのがこの3種類です。多くはコレステロール結石です。

コレステロール結石形成の危険因子として、

カロリー・動物性脂肪の過剰摂取高脂血症(特にⅣ型、高中性脂肪血症)

ホルモン補充療法経口避妊薬の使用

長時間の絶食、急激な体重減少、ダイエット、腸管運動機能の低下、肥満などがあります。

絶食やダイエット、腸管運動機能低下胆のう収縮能を低下させることで、

胆のう内にある消化液の流れを止めてしまい、結石ができやすい環境を作ってしまうことが原因です。

流れている川より、流れのない沼のほうが、砂や泥が底にたまりやすいことと同じですね。

ビリルビンカルシウム石の主因は胆道感染であり、胆汁うっ滞をベースとすることが多く、胆管狭窄や傍乳頭憩室などが危険因子となります。

黒色石は慢性溶結性貧血や肝硬変が原因で、胆汁中のビリルビン負荷が増えると形成されやすくなります。

症状が起こる人の割合は?

胆のう結石の日本消化器病学会の胆石症診療ガイドライン2021によると、

約70%の患者は無症状で発見され、

平均8.7年間の経過観察中に有症状化したのは約20%でした。

このうち軽症が11%、重症が11%で、軽度有症状化した患者の59%はその後に無症状に回復しました。

欧米では5年で10.1%, 10年で21.5%, 15年で32.6%が有症状になったと報告されています。

大体年平均で2%ずつ症状が出る可能性が増大します。

重篤な症状急性胆のう炎あるいは総胆管結石、急性胆管炎、急性膵炎によって生じます。

一方で、関連研究をまとめた報告によると、経過観察を選択(非手術)において半数の症例は手術をせずに経過観察可能であり、

重篤な合併症を起こさなかったことが報告されています

症状が出やすくなる要因とは:

以前から言われている5FForty(40代)、Female(女性)、Fatty(肥満)、Fair(白人)、Fertile(妊娠・出産))が強い相関があるといわれています。

さらに脂質異常症、消化管手術歴、ダイエットなどもリスク上昇がある要因といわれています

発作はなぜ起こる?たとえていうと

胆石症は、「散水ホースの中に小石が詰まった状態」に似ています。

小石があっても水が流れている間は問題ありませんが、出口に石がピタッとはまると、ホース(胆管)がパンパンに腫れ上がり、激痛や故障(炎症・感染)を引き起こします。

石を溶かすのは時間がかかりますが、ホースの接続部(胆のう)ごと新しくするのが一番手っ取り早い解決策、というのが現代の治療の考え方です。

治療:薬?手術?

胆のう結石に対して、使う可能性があるのは「ウルソ」と呼ばれる内服薬です。

効果は胆汁の流れを改善させるというもので、胆のうという袋の中に流れを起こさせて、底にたまった砂や泥を流していき、底にある結石も削って溶かしていくという作用を期待しています。

そのため結石が固くなる前の状態(泥団子のようなイメージ)なら、まだ効果があるかもしれませんが、石のように固くなってしまったものには効果がありません

目安は1cm以内で、レントゲンやCTで白くうつらない(超音波で白くうつるのはまだ可能性が残ります)胆のう結石なら、投薬で改善する可能性があります。

しかし1年以上の内服でようやく小さくなっていく可能性があるといった緩やかなスピードです。

この薬を長期内服することで、疼痛発作の頻度減少や手術への移行率を低下させる効果はあるといわれていますが、短期的な効果は示されていません。

ほかに効果的な薬は存在せず、確実に治療となる外科手術=胆のう切除術となります。

胆石発作や胆のう炎を繰り返していくと、胆のうがんになるリスクも増えていくため、

症状があるようなら手術加療が一番推奨されます。

治療法の比較(手術 vs 薬物 vs 経過観察)

項目腹腔鏡下胆のう摘出術胆石溶解療法(薬)経過観察(温存)
推奨度◎(標準治療)△(限定的)◯(無症状の場合)
根治性非常に高い(再発なし)低い(再発率50%以上)なし
入院期間3〜5日程度通院なし
メリット痛みとがんリスクの消失体への負担が最小費用がかからない
デメリット全身麻酔・手術の負担石が溶けるまで数年かかる常に発作のリスクあり

まとめ

胆のう結石自体は、たとえあっても無症状のままの人が約70%です。

年齢を重ねるたびに症状が出る可能性は増えますが、

まず症状が起こりやすいリスクがあるかどうかを判断して、経過観察するか治療を考えるかになります。

リスク要因(5F)などに該当する場合は「痛みがないから」と放置はせず、

早期検査とライフスタイルに合わせた治療選択(手術 or 温存)を行うことが重要です。

  1. 「5F」が最大のリスク: 40代、女性、肥満、白人、経産婦は特に注意が必要。
  2. 放置は「時限爆弾」: 無症状でも、急激な炎症や胆のうがんのリスクをはらむ。
  3. 根治なら「手術」: 薬物療法は再発率が高く、現在は腹腔鏡下手術が標準治療です。

自分がもし当事者になってしまった場合、慌てずに、自分の生活スタイルなども見直して治療法などを考えてみましょう。



一次情報・統計資料

  • 日本消化器病学会「胆石症診療ガイドライン 2021(改訂第3版)」
  • 厚生労働省「e-ヘルスネット(胆石症)」
  • 日本消化器外科学会 統計データ

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