はじめに:40歳以上になると、便潜血検査を受けましょう という案内が職場や役所からくる機会が増えてきます。
- 便を検査に出すなんて、めんどくさい。
- ひっかかったらどうしよう、癌なの?
と、実は検診自体を受ける人も約20%~70%(2022年 大腸肛門学会より)とまだばらつきも多く少ないのが実情です。実は損しているかもしれません。
消化器内科中心に20年診療してきた私が実際のメリットなどを解説します。
便潜血陽性となる人は、全体で5~7%と言われており、その中でさらに精密検査(大腸カメラ)を行って実際に大腸がんが発見されるのは1-2%です。意外と少ないと思うかもしれませんが、大腸がん自体症状がないときに見つける手段が少ないため、検診という手軽に可能な手段でできることは画期的なのです。
さらに大腸がん検診は数少ない死亡率低下効果が認められたもの(毎年受診で33%、2年に1回でも13-20%:国立がん研究センターより)であり、検診をやる意義が科学的に証明されたものです。この記事では便潜血反応のメリットから、陽性になった場合はどのような方法で検査を進めるかなどを解説します。
便潜血って何?検査することでわかること。痔との関連は?
便潜血反応とは、便に肉眼では見えないほどの微量な血液が付着しているのを検出する検査です。検査方法は便本体に綿棒で便をこすり取り回収します。検診では1日法(1回提出)、2日法(1日め、2日めと2日に分けて1回ずつ提出)があります。
1日法と2日法の違いは?
2回に日を分けて採取するほうが、陽性になる可能性が高くなります。基本的には1回でも陽性ならば、精密検査が推奨されます。陽性となった回数が1回と2回で過去データをまとめた報告(2017年日本消化器がん検診学会雑誌より)では、陽性が1回でも2回でもポリープの検出率は男性30-40%,女性20-30%で変わりませんでした。しかし、2回陽性のほうが10mm以上の大きなポリープが多く含まれるという結果でした。大きいポリープが多い=がんの可能性が高い となるので、2回陽性はより精密検査を推奨することなりますね。
痔があるから出血するんだよという人へ
痔でいつも拭いたときに血液はつくよ、この検査でも陽性なんだよ という人もいるのではないかと思います。このことを調べた人がいて、約68000人の問診票の中でから痔が悪いと答えた人35%、出血する人は22%含まれた評価で自覚症状のある人とない人に便潜血1日法での陽性率に差はなかったと報告しました。痔があるから便潜血に引っかかるという因果関係は証明できなかったわけですね。しかも、便潜血陽性で痔などからの出血症状があるほうが、精密検査で大腸がんを検出率が3-4%高い結果でした。
痔だけで繰り返し便潜血陽性になる可能性は少ない報告が多く、痔があっても便潜血陽性結果が出たら精密検査をおすすめします。
陽性になったら 追加の検査の方法はなにがあるの?
精密検査は 大腸内視鏡 か 大腸CT の2つから選ばれます。
ただ、便潜血陽性になった場合の精密検査は、まず大腸カメラを推奨されることが多いです。
大腸内視鏡:大腸カメラとも呼ばれます。施設にもよりますが半日から日中は準備も含めて時間を取ります。まず準備として(これが一番大変という人もいます)下剤を飲み、大腸を空にしないといけません。下剤の入った液体を1000~2000mlほど飲みます(薬+水分摂取でも最低1000mlの水を飲むことが必要です)。
大腸が空になったら、検査になります。鎮静剤・鎮痛剤を使う場合もあり、自転車・車での通院は控えましょう。検査は大きく分けて前半・後半に分かれていると考えてください。まず前半は肛門から大腸の入り口までカメラを入れる時間です。技量や受け手の個人差などもありますが、基本は5-10分程度です。普段便が動く向きと逆方向に進むので、腸が延ばされるときに、腹下しのような疼痛を感じる場合があります。また少量のガス(今は二酸化炭素を使用、腹部の張りが少なくなる)を使用して大腸の中を少し膨らませることもあり、腹部の張りを感じる方もいます。
後半はカメラを抜きながら観察します。特に何もなければ、6~8分程度の観察が主流です。見落としがないように大腸を膨らませつつ、残っている残便などをどけながら観察します。内視鏡の最大の利点は、ここで見つかったポリープはこの時に切除もできる点です。切除した場合はその時できた傷に応じて、入院になる場合もありますが、条件は施設によって異なります。ポリープを取っていく場合はさらに5-10分程度の時間を費やします。
ポリープがあることを見るだけなら、大腸CTで確認する方法もできるようになってきました。CTで大腸を撮影し3D合成し、カメラで見るような画像へ再構築していきます。
準備はカメラを行う方法と同じことをします。結局どの方法でも大腸を精密検査する場合は邪魔な便を出し切らないといけません。ただ、準備ができれば比較的負担は少なく、おしりからカメラでも使用するようなガスを注入し、腸を膨らませてからCTを取ります。1-2分程度で撮影は終わりますし、カメラを入れたときに起きる腸への負担はないため、痛みはないと思います。しかし、欠点はポリープがあった場合にその日に治療はできないということです。結局切除するなら大腸カメラになります。準備をもう一回やらないといけなくなりますね。
内視鏡とCTについて解説しました。どちらも一長一短ですが、CTができる施設はまだ少ないため、治療もかねて可能な内視鏡検査を選ぶ場合がまだ多いです。内視鏡の苦痛も鎮痛剤など適時併用し、和らげているところが基本です。
まとめ
便潜血から、その先の精密検査について解説しました。
- 1,便潜血は大腸がんの死亡率を下げることが可能な検診である
- 2,1回でも陽性になった場合は、精密検査をしっかりうける
少しでも早く大腸がんが発見でき、皆さんが健康に過ごせるようになればうれしいです。
コメント