レントゲンやCTって毎日撮影しても大丈夫?現役の医師が解説します。

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検査の代表でもあるレントゲン(X線検査)やCT検査。体を傷つけず、体内をみることができますが、その時に使用されるのが放射線です。

放射線と言えば、以前の震災の時によく耳にしたのが、「被ばく量」

被ばく量とは人体にあてられた放射線の量を指しますが、

放射線をどのくらい浴びると、人体にどんな影響が起きるかみなさんご存じでしょうか?

実際に診療していると、すごく被ばくを気にする方がおられますが、イメージだけで過剰に考えてしまっていると感じることが多いです。

今回の記事は「医療被ばく」について解説していきます。

放射線自体はあてられても痛くもかゆくもないし、通常の検査の範囲ではまず問題が起きない量ですが、

「正しく恐れる」ことが大事です。

【結論】医療被曝の「正しく恐れる」基準

「100ミリシーベルト(mSv)」以下の低線量被曝では、健康被害(がん死亡リスク)の明らかな上昇は確認されていません。

胸部レントゲンやCT検査は、病気を見逃すリスク(不利益)を回避するための「利益」が上回ると判断された際に行われるものであり、

通常の検査頻度であれば過度に心配する必要はありません


3つのポイント

  1. 線量の差: レントゲンは、イメージで「小雨」CTはイメージで「土砂降り」にあたります。CTはレントゲンの数十倍から百倍以上の線量になりますが、それでも1回で100mSv以上の危険域に達する線量にはなりません
  2. 100mSvの壁: 身体に影響(がんのリスク増)が出ると科学的に証明されているのは、累積100mSv以上の被曝からです。
  3. LNTモデル: 「どんなに微量でもリスクはゼロではない」という厳しい安全基準(仮説)に基づき、医療現場では「最適化(ALARAの原則)」が徹底されています。必要性がないのに「毎日CTとりましょう」と指示する病院はないと思います。

医療被曝の比較表(ベンチマーク)

日本の公的統計およびICRPの資料に基づき、代表的な検査と自然放射線を比較しました。

項目推定被曝線量(mSv/回)特徴・備考
歯科パノラマレントゲン約 0.03極めて微量。
胸部レントゲン約 0.06健康診断の定番。日常の自然放射線10日分程度。
胸部CT検査約 5 ~ 10詳細な画像を得るため、レントゲンより大幅に高い。
腹部・骨盤CT検査約 10 ~ 15範囲が広く、密度が高いため線量も増える。
自然放射線(日本平均)約 2.1(年間)普通に生活しているだけで受ける量。

たとえ話:放射線被曝を「雨」に例えると

放射線被曝の影響を理解するために、「雨」に例えてみましょう。

  • レントゲン検査は、「小雨の中をサッと走る」ようなものです。服が少し湿る(細胞に少し刺激がある)程度で、すぐに乾いて元通りになります。
  • CT検査は、「一時的な土砂降りに遭う」ようなものです。しっかり濡れますが、お風呂に入って着替えれば=細胞の修復機能が働けば、風邪をひく=がんになるリスクは極めて低いです。
  • 健康被害が出るレベル(100mSv以上)は、大雨の中で一晩中立ち尽くす」状態です。ここまでくると、体調を崩す確率が統計的に無視できなくなります。

私たちの体には、傷ついた遺伝子を直す「修理工場(修復機能)」が備わっています。

少量の雨であれば、工場がフル稼働して元通りにしてくれるのです。


「どのくらい」やると影響が出るのか

放射線の影響には「確定的影響」と「確率的影響」の2種類があります。

すぐに出る影響(確定的影響)

一度に大量の放射線を浴びた場合に起こります。

  • 100mSv以下: 症状は出ません。
  • 250mSv以上: 白血球の減少などが見られる場合があります。
  • 500mSv以上: 水晶体混濁(目の影響)など。通常、病院の検査でこのレベルに達することはありません。

将来的なリスク(確率的影響)

「がん」になる確率のことです。

現在、「累積100mSv」を浴びると、がんによる死亡リスクが約0.5%上乗せされるというのが国際的な定説です。

日本人の2人に1人ががんになる(リスク50%)現状において、この0.5%の増加を検知するのは非常に難しいレベルです。


なぜCT検査は線量が高いのか

CT検査は、体の周りを360度回転しながら連続的にレントゲンを照射し、断面図を合成する技術です。

情報量が圧倒的に多いため、1回の検査でレントゲン数十回〜100回分以上の放射線を使用します。

しかし、その分、レントゲンでは見つけられない数ミリ単位のがんや出血を発見できるという、

命に直結するメリットがあります。

結局はどのくらいレントゲン・CTをとると危険なの?

どのくらいとったら危険、このくらいなら絶対安全という基準はありません。

「これだけ間隔を空ければ、被ばくがリセットされる」という明確な期間が残念ながらわかっていないためです。

細胞の修復機能が人間には備わっており、数時間から数日で多くの修復が行われます。

なので、同じ量の放射線でも一度に受けるより、小分けにして受ける方が、生物学的な影響は少なくなるといわれています

さらに検査を受けないデメリット=検査で得られる安心を考えると、

「自分にとって必要な画像検査なら、メリットの方が大きい」といえるでしょう。

頻回に検査を勧められるときは、「被ばく量」よりも「検査をする理由」を確認しましょう。

必要のない検査だと思ったら、やる必要はないのでしょうから。

ちなみに、許容できる公的な基準値は以下のように決められています(自然被ばくや医療被ばくを除いた量)

  • ICRP(国際放射線防護委員会):1mSv/年
  • 日本政府(公衆):1mSv/年
  • 放射線業務従事者:50mSv/年(職業上の上限、5年間で100mSvを超えない運用)

医療被曝は、これらの量よりは多い被ばくになります。

安全性だけを考えても、上記の被ばく量なら許容できるというものです。

まとめ

医療被ばくのなかで、一度検査をした後に放射線の影響が出るほど多く被ばくする検査はありません

累積の方に関しては、年間100mSv以下が一つの目安としていいでしょう。

レントゲンとCTを比較すると、おおよそ「レントゲン100枚=CT1回」分の被ばく量としていいでしょう。

レントゲンなら毎日とっても、被ばくとしての影響はあまり考えなくてよさそうですね。

ただCTの場合で、一度に複数個所を撮影する場合、年間5回以上撮影するようなら、100mSvを超えてしまう量をうけます。

被ばくしたとはいえ、がんのリスクが非常に高くなるというわけではありませんが、必要ないならやらないに越したことはないでしょう。

何かしら病気が疑われて、CT検査をするとき、1~2回程度は特に問題がないと考えてよいと思います。

放射線検査をするときに被ばくが気になるようなら、その検査をするメリットを確認して、納得したうえで検査を受けるようにしていきましょう。



情報源・参考文献

  • 環境省:放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(2023年度版)
  • 国立がん研究センター:放射線検査による被曝のリスクについて
  • ICRP(国際放射線防護委員会)Publication 103

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