はじめに:
喉が痛い、鼻水が出る、なんかだるい、少し熱っぽい、咳が出るなどなど、これって風邪なの?といった症状がありますよね。ただ昨今はコロナも流行っているし、病院に行ったほうがいいのかな?と悩まれる方も多いのではないでしょうか。
都内総合病院中心に一般内科・消化器内科を20年経験し、現在も診療中の私が解説します。本当の風邪症状なら病院に行く必要はない、コロナウイルスは風邪の原因ウイルスの一つだが、頻度は少ないものの長期的に悩まされる場合があるなど、この記事の内容を踏まえてもらえれば、より安全に対応可能になります。
病院に行くことで得られるメリット、できる限界もお話しします。みなさんのイメージと違う内容があるかもしれませんが、現在医療を行っているほうからは実は精一杯なのです。
目次 :1, 風邪とは 風邪症候群と呼ばれる複雑怪奇なもの 1
2,これって風邪なの 厄介な風邪もどきたち
3.コロナウイルスの症状と現在の診療、治療法
4.風邪の症状で病院ができること、限界なこと
5,まとめ
1,風邪とは:風邪症候群と呼ばれる怪奇なもの
風邪の定義ってみなさんご存じでしょうか。「上気道(鼻腔、咽頭、喉頭)に炎症が起こり、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳や発熱が出るもの」とされています。典型的と考えるためには、鼻、のど(飲み込むときに痛い)、発熱の3本柱がそろうことです。原因の90%以上がウイルス性といわれており、ウイルスは大きさが非常に小さいため、移動しやすく鼻⇔のどの移動で両方とも影響されます。さらにのどにあるリンパ腺や表面の血管から体に入ろうとするのを防ぐため、自分の免疫が働きますが、その時の合図として発熱が起こります。
つまり、熱、のど、鼻 に 〇〇が効く という某CMのような症状がそろえば、典型的な風邪症状としてよく、90%以上がウイルス性となります。特効薬はなく、時間経過で自然に改善するため、症状を抑える薬だけ使うことがある程度です。市販薬でも大きな差はないと思います。
また、症状の自然経過もお伝えします。発症後1-2日目に鼻、のどの症状がピークとなり、この時に発熱も一緒に起こりやすいと思います。その後、咳が出てきて、のどの痛みは少し収まってきます。熱も下がり傾向になり、発症後4-5日で咳だけ残り、その後症状は消失します。咳が残る期間は、個人差が多く。長い人では1か月を超える場合もあります。2か月を超えると慢性咳という概念になり、別の病気の可能性がでるため、風邪を引いた後でも1か月以上咳が出るようなら、一度病院受診をお勧めします。
2,これって風邪なの 厄介な風邪もどきたち
3本柱が欠けている状況の場合、典型的な風邪とすぐに判断しないほうがいい場合があります。多いのは鼻の症状はなく、のどだけがすごく痛くて熱がある。ほかには、のどは痛くない(飲み込むときの痛みはない)けど、咳と痰が多くて息苦しいパターンです。医者泣かせのパターンではのどの違和感、だるさで来られた高齢の女性で、本人も風邪と思っていたようでしたが、心筋梗塞だったということもあります。
のどだけがすごく痛い=鼻の症状がないときは、多いのは扁桃腺炎です。のどのリンパ腺の親玉みたいなところですね。ここに集中した炎症が起こります。原因としては口の中にいる細菌、有名なのは溶連菌とよばれているものです。ウイルスではなく、細菌が原因なので、抗生物質の投与が早期改善に役に立ちます。
鼻ものども症状がないのに咳と痰が多くて、息苦しい となると、上気道よりも下気道(のどより奥の気管・気管支・肺)に影響が出ています。もちろん最初にのども鼻も症状があって、というパターンもあるので、風邪症状の一つという可能性もあります。ただ、影響が広がっているため、肺炎を念頭に考える必要があります。肺炎もウイルスよりも細菌がかかわっていることが多いため、抗生物質や状況に応じた投薬が必要になります。
3,コロナウイルスの症状と現在の診療、治療法
前述しましたが、風邪とはあくまで症候群(原因には言及していない)なので、風邪症状の原因ウイルスがコロナウイルスのときに、コロナウイルス感染症という病名になります。ウイルスの特徴もあり、体の中でも広がりやすく、上気道、下気道にとどまらず、血液をめぐると全身の症状が出ることもあります。
昨今では、のどの症状が強いとの報道がありましたが、私の印象では今までの夏風邪と大差はありません。ただ、コロナウイルスは後遺症というものがずっと言われているため、今がつらくないからと軽く考えてもダメな結果になる可能性があります。
コロナウイルスは発見時の病勢が強く、薬の開発も早かったため、ウイルスに対しての薬があります。それなりの価格(3割の保険負担でも15000円前後から30000円前後まで)の薬であり、費用対効果を各々が考えてもらう必要があります。私の場合は、効果として症状が1-2日早く改善することと後遺症リスクが半減するということを伝えて、検討してもらっています。
4,風邪の症状で病院に行く 何ができるの?
体がつらいから病院に行くわけですが、風邪症状の場合できることは結構限られています。大部分は症状緩和の処方箋をもらって終わりになります。脱水症・熱がつらくてとなれば点滴投与まで行う場合はあります。昨今はコロナ感染が増えており、コロナウイルスの簡易検査をして、コロナの判定であれば、また薬など検討されるぐらいでしょう。コロナウイルスがらみでは職場から確認してもらうように指示されることもまだまだ多いです。
発症して1日は、まだはっきりしない場面も多く、病院に行っても症状緩和の投薬のみで終わることが大半です。時間経過が1日程度では短く、どの検査でも判別ができないためです。
脱水症がなく、自覚症状もそこまでつらくないようなら市販薬で見ても、典型的な風邪症状なら問題なく過ごすことができると思います。ただ、風邪もどきの症状が数日続き、状況が良くならない場合は、風邪以外の可能性を念頭に病院受診を考えてください。自分でも風邪とは違うかもしれないという気持ちでいきしょう(時間外直前に駆け込むと、検査などできず、後日に行くはめになるため、なるべく午前中に動くのが良いと思います)。
5.まとめ
この記事では、風邪とコロナの違いと風邪症状で病院ができることを掘り下げました。
簡単にまとめると
1, 風邪症状の定義:症状の3本柱は熱・のど・鼻 そろうことが大事
2, 症状がそろわない場合は注意 数日改善なく続く場合は病院へ
3, コロナウイルスは症状が多彩 治療薬もあるが高額 後遺症のリスク軽減のと綱引き
4, 風邪症状で病院にいっても、大部分市販薬と変わりない処方薬のみ。
ただし、コロナの診断や風邪の典型症状以外が続くなら受診を推奨
ここまで長文を読んでいただき、ありがとうございました。皆さんの中で、何か一つでもためになった、参考になったことがあれば幸いです。
コメント